
相続の面談では、手続に必要な情報だけでなく、ご家族の事情や迷いまで伺っています。
「実家をどうするか、まだ決められなくて」「弟とは少し話しにくくて」といった言葉も、そのひとつです。
ただ、こうした言葉の多くは案件管理に入力されず、担当者の記憶の中にとどまります。
面談の録音はまだ一般的ではなく、取り組んでいる場合も、用途は記録づくりまでということが多いように思います。
この考え方を少し広げると、1本の音声は何度も使える事務所の資産になります。
この記事では、ご相談者のために3つ、事務所のために3つ、合わせて6つの使い道を整理します。
録音を「記録」だけに使うのはもったいない
要約やメモに残るのは、担当者が大事だと考えたことです。
音声には、その手前の情報まで残っています。
ご相談者がどんな言葉で話されたのか。
どこで言いよどんだのか。
ご家族の関係をどう捉えているのか。
担当者がどう問いかけ、どう受け止めたのか。
手続を進めるだけなら、こうした情報がなくても困りません。
一方で、次のご提案を考えるときや、面談を振り返るときには、いちばんの手がかりになります。
同じ面談でも、担当者が覚えている内容と音声に残っている内容は、必ずしも同じではありません。
記憶に頼るほど、印象に残った話だけが次につながり、さりげなく出た一言は消えていきます。
録音の同意の取り方や面談記録の下書きについては、相続面談のヒアリング内容に関する生成AIの活用法で詳しく書きました。
ここでは、記録ができたあとに、同じ音声をほかに何に使えるのかを見ていきます。
同じ面談の音声から、記録だけでなく提案の材料も作れます。
ご相談者のために使う3つ
1つ目は、面談後の整理シートです。
相続は、面談に来られた方だけでは決められないことが多くあります。
他の相続人や決定権を持つ方と話し合うべき点、リスクを1枚にまとめれば、ご相談者はご家族に説明しやすくなります。
LINEでお送りする形にすれば、LINEにご登録いただく理由にもなります。
これは現在、支援先の事務所と具体化を検討している使い方です。
2つ目は、検討中の方へのフォロー文の下書きです。
定型の案内より、面談で話された心配ごとに触れた文面のほうが、読む方にとって自分のこととして届きやすいと思います。
下書きはAIが作り、内容と送るかどうかは担当者が確かめます。
3つ目は、二次相続など次のご提案の材料です。
とある司法書士法人様では、面談の文字起こしをもとに提案資料を用意し、遺言書の作成をお勧めすべきと考えた8件にご提案しました。
トライアル開始から約1か月で、そのうち4件の受任につながっています。
AIが出すのは材料で、提案するかどうかは人が決めています。
Samikaでは、相続分野に取り組む士業事務所の先生方に向けて、マーケティングと生産性向上のノウハウをメルマガ「相続GROWTH通信」でお届けしています。ご登録いただいた方には、特典「相続分野の経営指標レポート2026」をお送りします。
事務所のために使う3つ
ここからは実績としてではなく、音声があるからこそできる使い方としてご紹介します。
4つ目は、受任・失注の要因の振り返りです。
受任に至った面談と至らなかった面談を並べると、説明の順番や費用をお伝えした場面の違いが見えてくるかもしれません。
記憶ではなく、実際のやり取りをもとに話し合えます。
5つ目は、面談者ごとの振り返りと育成です。
代表やベテランの聞き方を文字で共有し、若手の面談では聞き漏らしやすい点をAIに整理させる使い方が考えられます。
評価のためではなく、本人が気づくための材料として使うのがよいと思います。
6つ目は、ご相談者の言葉をHPや相談事例の表現に生かすことです。
たとえば「相続登記」より「実家の名義」と話される方が多ければ、見出しの言葉を考える参考になります。
事例として公開する場合は、ご本人の意向と同意を確認し、個人が特定されない形にすることが前提です。
1本の録音から作れる6つのもの。
面談音声データを最大限活用するための3つの条件
使い道を広げるには、次の3つを先に整えておきたいところです。
1つ目は、録音の質です。
文字起こしの精度は、録音の質に大きく左右されます。
ある事務所の面談3件を比べた例では、録音の質が良い面談と低い面談で、案件管理の項目との一致率に76%と62%の差が出ました。
2つ目は、保存先と命名をそろえることです。
探せない音声は、結局使われなくなります。
ファイル名に案件番号と面談日を入れる、といった簡単な決まりで十分です。
3つ目は、目的ごとにAIへ渡す範囲を決めることです。
毎回、全文を渡す必要はありません。
学習に使われない設定にするだけでは足りず、誰がアクセスできるか、保存と削除をどう扱うかも決めておく必要があります。
考え方は情報漏洩が心配で、生成AI活用が進まない─そのボトルネックを解消する、リスク管理の考え方にまとめています。
まずは使い道を1つに絞る
6つを一度に始める必要はありません。
まずは整理シートかフォロー文のどちらか1つを、同意を得て録音した面談1本で試してみるのがよいと思います。
どちらも、お客様にお渡しする前に人が確認するので、誤りに気づきやすく、効果も実感しやすいと思います。
1件目で効果が見えれば、次の使い道へ広げる判断もしやすくなります。
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