相続面談のヒアリング内容に関する生成AIの活用法

2026.10.26 16:07


相続の面談では、家族の事情や財産について、時間をかけてお話を伺います。ところが、面談後に残る記録は、依頼内容と手続きに必要な情報が中心になりがちです。

「実家は母が一人で住んでいて、いずれどうするか考えないと」。こうした一言を覚えていても、日々の業務に追われるうちに、次の提案につなげる機会を逃してしまうことがあります。

録音と生成AIを組み合わせれば、記録作成の負担を減らしながら、相談内容を振り返りやすくなります。ご相談者の情報を適切に扱うことを前提に、提案やスタッフ教育に活かす方法を整理します。

 

 

面談には記録しておきたい4つの情報がある

面談で得られる情報は、大きく次の4つに整理できます。

残りにくいのは、後の2つです。目の前の手続きに直接関係しない話題は、簡潔な記録では省かれがちです。また、代表やベテランが自然に行っている聞き方は、本人も言葉にして教えにくいものです。

録音があれば、必要な場面に戻って確認できます。担当者も、話を聞きながら細かいメモを取り切らなければならない負担を減らし、ご相談者の話に集中しやすくなります。

 

 

録音前に利用目的と扱い方を説明する

録音は、面談の本題に入る前に、目的を説明して了承をいただく運用がよいと思います。たとえば、記録作成に外部の文字起こし・AIサービスを使う場合は、次のようにお伝えします。

「お話の聞き漏らしを防ぎ、面談記録を作るために録音してもよろしいでしょうか。記録の作成には、当事務所が選定した外部の文字起こし・AIサービスを利用します。情報の扱いについてもご説明いたします」

この説明を入口に、利用するサービスやデータの扱いを、実際の運用に沿って伝えます。外部サービスを使うのに「事務所の外には出しません」と説明してしまうと、実態と食い違います。

スタッフ教育にも使うなら、その目的と共有範囲も説明に含めます。録音を望まれない場合はメモで対応し、面談を進めます。

 

 

要約だけでは残らない言葉を確認する

録音を文字起こしし、生成AIで面談記録や提案メモの下書きを作ります。その際、短い要約だけで今後の提案まで考えようとすると、家族への心配や、まだ整理されていない希望が抜け落ちることがあります。

そこで、原文を管理された場所に保存し、必要な箇所に戻れるようにします。AIには目的に必要な範囲を渡し、不要な氏名や住所などは削除・置換します。全文を無条件に入力する必要はありません。

作成するものは、まず次のような下書きに絞ると始めやすくなります。

・面談記録と案件管理システムへの入力案

・ご相談者に追加で確認したい事項

・二次相続や空き家など、今後の相談につながる話題の整理

AIへの指示では、「ご本人が話した事実」「未確認のこと」「提案を検討するための仮説」を分け、根拠となる発言も示すようにします。担当者が確認しやすくなり、推測を事実として記録することも防ぎやすくなります。

面談後に記憶をたどって記録を書き直す作業や、提案の材料を一から探す手間を減らせれば、担当者は内容の確認と次の対応に時間を使えます。

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面談で聞いた話を次の提案につなげる

ある相続特化型の司法書士法人様では、面談の文字起こしから、生成AIを使って振り返りシートや二次相続の提案資料、担当者向けのトークスクリプトを用意する取り組みを始めています。

相続手続を受任したお客様のうち、遺言書の作成をお勧めすべきと判断した8件に提案し、トライアル開始から約1か月で4件のご依頼につながりました。

これは対象を選んで提案した少数の事例であり、すべてのお客様に同じ割合で受任できることや、AIだけで成果が出たことを示すものではありません。面談で伺っていた事情を整理し、担当者・資格者が必要性を判断して説明した点が、この取り組みの要点です。

ご相談者の一言は、提案の必要性を確かめる手がかりです。AIが挙げた話題をもとに、ご本人の希望や現在の状況を確認し、その方に必要な対応を検討します。

 

 

代表の聞き方をスタッフ教育に活かす

代表やベテランの面談を振り返ると、どの順番で質問し、何を確認してから費用や提案の話に進んでいるかを整理できます。生成AIは、複数の記録から共通する進め方を拾い、面談の手引きや練習用の台本を作る補助に使えます。

スタッフの面談も振り返れば、「もっと寄り添って」という抽象的な指導に加え、「不安の内容を確認する前に、手続きの説明に進んでいる」と、具体的な場面を示せます。教える側も、スタッフ側も、次に直す点が分かりやすくなります。

ただし、受任率の差には相談内容や担当案件の違いも影響します。代表の話し方をそのまま正解にせず、ご相談者が理解できているか、希望を確認できているかを含めて見直します。

スタッフに任せる範囲は、資格や担当業務に応じて定めます。基本情報の聞き取りや事実の整理を標準化し、法律・税務上の判断や資格者が行うべき対応は、それぞれの資格者につなぐ形です。

 

 

続けられる運用と情報管理を先に決める

録音を始める担当者、保存先、ファイル名、記録の確認者をそろえます。利用目的に応じたアクセス権限と保存期間も決め、録音や文字起こしを漫然と残し続けない運用にします。

外部サービスは、入力データの学習利用の有無に加え、保存・削除の条件や提供事業者による取扱いを確認します。「学習に使われない」という設定だけで、個人情報や守秘義務への対応がすべて済むわけではありません。事務所の利用目的と守秘義務に沿って、入力できる情報の範囲を定めます。

文字起こしの聞き間違いやAIの誤った整理もあるため、氏名、続柄、日付、金額、依頼内容は録音や資料と照合します。お客様に渡す資料や専門的な提案は、担当者・資格者が確認してから使います。

また、内部の記録をHPの相談事例へ転用することは、別に検討する必要があります。氏名を消しても、家族構成や財産の事情から個人が分かる場合があります。公開する場合は、守秘義務や本人の意向を踏まえ、利用目的、必要な同意、公開範囲を改めて確認します。

 

 

まずは面談記録の下書きから始める

最初から記録、追加提案、教育のすべてを仕組みにする必要はありません。まずは了承を得た面談で記録の下書きを作り、確認にかかる時間や記録の質を確かめる。そのうえで、今後の相談につながる話題の整理や、教育への活用を広げる進め方がよいと思います。

Samikaでは、2026年11月4日(水)・5日(木)・6日(金)の各日18:00〜19:00に、無料オンラインの「相続業務×生成AI 活用事例セミナー」を開催します。3日程とも同じ内容です。

面談の文字起こしを二次相続の提案につなげている司法書士法人の事例も、作成資料とあわせてご紹介します。自事務所で最初に取り組む工程を考える機会として、ご活用ください。


執筆者のご案内

川崎 啓
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓

東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。

【相続・生前対策分野に注力する士業事務所向け】
「相続業務 生成AI活用事例レポート」

収集した戸籍の文字認証(AI-OCR)、遺産分割協議書、財産目録などの自動作成を実現するシステム構築から、相続手続顧客に対する二次相続提案の自動作成まで、ChatGPTやClaudeなどの生成AIを活用した業績アップ・生産性向上に成功した士業事務所の最新事例をまとめています。

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