「相続に強い」と打ち出す事務所が増えるほど、相談者から見た違いは、かえって見えにくくなります。
相続相談の実績、初回相談無料、ワンストップ対応。
いずれも相談者に安心してもらうために必要な情報です。
ただ、同じような言葉が複数の事務所に並ぶと、それだけでは相談先を選ぶ決め手になりません。
専門性を伝えることは重要ですが、専門性だけで違いを伝えることは難しくなっています。
国税庁が2025年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は166,730人、課税割合は10.4%でした。
いずれも前年を上回っています。
相続税申告に限れば、専門家が関与し得る案件は増えています。
一方で、相談者から見れば、相続を掲げる事務所の選択肢も少なくありません。
こうしたなかで、これまで以上に伝える必要があるのが、「何を依頼できるか」だけでなく、「誰が相談に乗るのか」という情報です。
資格や実績だけでは伝わらない選ばれる理由
2026年9月11日、アトム法律情報株式会社は、相続分野の専門家へのインタビューメディア「相続プロ名鑑」を公開しました。
弁護士、税理士、司法書士などに取材し、その考え方や仕事への向き合い方を紹介するWebメディアです。
注目したいのは、資格や経歴を並べるだけではなく、なぜ相続業務に取り組んでいるのか、相談者とどう向き合っているのか、仕事で何を大切にしているのかを、本人の言葉で伝えている点です。
相続相談では、財産の内容だけでなく、家族関係や親の老後、家族間で話しにくい事情まで共有することがあります。
そのため相談者は、専門性や料金とともに、「この先生になら話せそうか」「自分たちの事情を受け止めてもらえそうか」も見ています。
専門家本人の考え方や姿勢は、単なる人柄紹介ではなく、相談先を選ぶための情報になります。
専門家の考え方を見える形にする
ここでいう専門家自身の発信は、趣味や休日の過ごし方を前面に出すことではありません。
相談者が知りたいのは、どのような相談を得意としているのか、難しい状況で何を重視するのか、どのような説明を心掛けているのか、といった仕事に関わる情報です。
例えば、相続不動産の扱いに詳しい司法書士、おひとりさまの生前対策に力を入れる行政書士、二次相続まで見据えて提案する税理士。
同じ「相続に強い」という表現でも、得意領域と考え方が見えれば、相談者は自分に合う専門家を探しやすくなります。
事務所側にとっても、誰がどの分野を担うのかを明確にすることは、サービスの違いを伝える助けになります。
事務所全体の実績に、担当する専門家の具体的な情報を重ねることで、専門性がより伝わりやすくなります。

発信を所長一人に偏らせない
相続分野のコンテンツは、所長がブログを書き、動画に出演し、トップページにも所長の顔を出す形になりやすいものです。
立ち上げ期には、事務所の信頼を早く伝えられる有効な方法です。
ただ、所長だけが発信を担い続けると、相談者の認知も指名も所長に集まりやすくなります。
ほかの資格者や担当者に十分な経験があっても、その存在が外から見えなければ、相談者の選択肢には入りません。
そこで、所長の発信を弱めるのではなく、事務所内の専門家にも発信の機会を広げます。
不動産が絡む相続はこの司法書士、遺産整理はこの担当者、生前対策はこの税理士というように、複数の専門家の得意領域や考え方が見える状態をつくる。
「この先生にしか相談できない」ではなく、「この事務所には自分に合う専門家がいる」と感じてもらうための発信です。

一度の取材を複数の発信に展開する
スタッフに発信を広げようとしても、日常業務の合間に記事を書いてもらうのは現実的ではありません。
そこで有効なのが、専門家へのインタビューを起点にする方法です。
30分程度の取材で、得意な相談、仕事で大切にしていること、印象に残っている支援、相談者への伝え方などを聞き取ります。
その内容を整理すれば、ブログ記事、スタッフ紹介ページ、短尺動画、LINEコラム、SNS投稿、セミナーの講師紹介などに展開できます。
「相続プロ名鑑」でも、電話インタビューの内容から生成AIを活用して原稿の素案を作り、編集者が仕上げ、本人の確認を経て公開する流れが案内されています。
事務所内の発信でも、専門家本人に一から原稿を書いてもらう必要はありません。
本人は取材と事実確認に集中し、構成や編集は別の担当者が担う形にすれば、日常業務への負担を抑えられます。
一度聞き取った知識や考え方を、用途に合わせて繰り返し活用する。
これが、専門家の経験を「発信資産」に変えるという考え方です。

発信は専門性を育てる機会にもなる
専門家への取材は、集客のためだけの施策ではありません。
自分は何を得意とし、どのような相談者を支援したいのか。
今後どの分野で経験を積みたいのか。
発信する内容を考える過程で、本人の専門性や役割も整理されます。
その方向性が事務所の事業戦略と合っていれば、発信を見た相談者から該当分野の相談が入り、担当者の経験がさらに積み上がります。
コンテンツ運用と人材育成を別々に考えず、専門分野を育てる取り組みとして設計することが大切です。
全員をインフルエンサーにする必要はない
もちろん、スタッフ全員にSNSでの発信を求める必要はありません。
発信への抵抗感や適性には個人差がありますし、誰を前に出すかは、本人の希望も踏まえて決めるべきです。
重要なのは、誰を、何の専門家として、どのような相談者に伝えるかを決めることです。
人数を増やすことより、事務所が伸ばしたい分野と、本人の経験や意欲が重なるところから始めるほうが、発信の内容にも一貫性が生まれます。
何ができる事務所か、に誰がいる事務所かを重ねる
相続を扱えること、十分な実績があること、相談しやすい料金や体制を整えていること。
これらは今後も重要です。
ただ、それだけでは違いが伝わりにくいのであれば、事務所にいる専門家の得意領域や考え方まで見せる必要があります。
「何ができる事務所か」に、「誰がいて、どのように相談に向き合う事務所か」を重ねる。
専門家自身の発信は、その違いを相談者に伝えるためのコンテンツになります。
Samikaでは、相続分野に取り組む士業事務所に対して、広告やSEOなどの集客施策に加え、誰をどの分野の専門家として伝えるかという設計や、取材を起点としたコンテンツづくりをご支援しています。
作成した記事やコラムを、既存のご相談者や見込み客へLINEで届けるところまで含めて整理することも可能です。
自事務所で誰をどのように発信していくか検討したい先生方は、お気軽にご相談ください。
参考資料
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
アトム法律税務グループ「相続の専門家インタビューメディア『相続プロ名鑑』を公開」
