
相続・生前対策の集客というと、これまでは「どうすれば相談を増やせるか」が中心でした。
SEOや広告、セミナー相談会、紹介先開拓。
いずれも今後も重要です。
ただ、2026年8月に北海道と新潟で発表された2つの取り組みを見ていると、その一つ手前にある競争が、これから効いてくるように感じます。
「専門家に相談しよう」と思う前の段階で、誰が顧客との接点を持っているか。
相続・終活分野のマーケティングは、発生した相談を獲得するだけでなく、将来相談する可能性のある人との接点をどれだけ早く持てるかという競争に変わり始めているのではないでしょうか。
札幌テレビが、LINEやYouTubeから終活事業へ
札幌テレビ放送(STV)は2026年8月18日、「STVシニアサポート」の取り組みを発表しました。
YouTubeで毎週終活に関する動画を公開し、LINEでも情報を配信。
LINE上ではチャットによる終活相談も受け付けています。
さらに2026年10月からは、生前整理・遺品整理、整理収納、サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームの紹介、自宅・空き家の売却などへ事業を広げる予定です(住宅・施設紹介など一部は提携事業者が提供)。
興味深いのは、いきなり「終活サービスを申し込んでください」と集客しているわけではない点です。
- YouTubeで情報を見る。
- LINEに登録する。
- 終活に関する情報が届く。
- アンケートで「遺言」「エンディングノート」「サ高住」など、関心のあるテーマを回答する。
- 必要になれば相談し、その先に具体的なサービスがある。
つまり、サービスを必要とする前から接点をつくっているわけです。
STVは札幌市保健福祉局と協業して「札幌市公式終活ガイドブック」も制作しており、地域メディアとしての認知・信頼を、終活分野の継続接点へ広げようとしていることが分かります。
新潟日報社は「困ってから」ではなく「元気なうち」につながる
もう一つ注目したいのが、新潟日報社と株式会社想ひ人の取り組みです。
2026年8月20日に発表された「地域コンシェルジュ」は、高齢期に生じる介護・医療・お金・住まいなどの困りごとを整理し、適切な制度や専門職につなげる仕組みで、2026年10月から12月に新潟県内で実証されます。
特に注目したいのは、「困りごとが発生した後に探す相談窓口ではない」という設計です。
まだ元気な段階から無料診断を利用でき、状況を入力すると、リスク、解決策、相談先をまとめた個人向けレポートが自動発行されます。
そこから、社会福祉士等への個別相談や、「何を・誰に・どの順番で頼むか」を整理する支援につなげていきます。
新潟日報社が読者への告知と「地域の信頼接点」を、想ひ人がシステム開発と相談運営を担います。
2つに共通するのは「相談前からつながる」という設計
この2つは、提供するサービスも事業モデルも異なります。
ただ、マーケティングという視点で見ると、共通点はかなり明確です。

という流れです。
従来の士業事務所の集客は、この後半から始まるケースが多かったと思います。
「相続登記をお願いしたい」
「遺言を作りたい」
「相続税について相談したい」
ニーズが顕在化した人に対して、広告、SEO、紹介などで接点をつくる。
この段階では、顧客はすでに「専門家を探す人」になっています。
一方、今回の2つの取り組みが狙っているのは、そのもっと前です。
「親の今後が少し気になる」
「実家をどうするか考えないといけない」
「終活について少し勉強しておきたい」
まだ具体的な依頼内容は決まっていない。
だから、司法書士や税理士を検索するほどでもない。
この段階で接点を持ち始めることに、大きな意味があります。
士業が競う相手は、他の士業だけではなくなる
今回の動きは、地域メディアが士業以上の専門知識を持つという話ではありません。
相続登記、遺言、相続税申告といった専門業務では、当然ながら資格者の専門性が必要です。
ただし、顧客との最初の接点を持つために、専門資格は必ずしも必要ありません。
日常的に接している。
信頼されている。
情報を届けられる。
困ったときに思い出してもらえる。
こうした「相談前のポジション」では、地域メディアをはじめ、介護事業者、不動産会社、金融機関、葬儀社など、さまざまな事業者が強みを持っています。
だからこそ士業事務所も、「相談が発生したら、どう集客するか」だけでなく、「相談が発生する前の顧客と、どうつながっておくか」を考える必要が出てきます。
「相談件数」の一つ手前にKPIを置く
多くの相続事務所がKPIとして管理しているのは、問い合わせ件数、相談件数、受任件数、受任率、売上といった数字だと思います。
これらは重要ですが、顧客育成型へ移行するのであれば、その一つ手前の数字も見ていく必要があります。

- 見込み顧客との接点数(LINE登録者数、コンテンツ閲覧者数)
- 診断・アンケート回答者数
- 相続・生前対策への関心テーマ
- 継続接点から相談へ移行した件数
特に重要なのは、LINE登録者数だけを増やして終わらせないことです。
1,000人の登録者がいても、誰が何に関心を持っているのか分からず、同じ情報を送り続けているだけでは、十分な顧客資産とはいえません。
誰が、何に関心を持ち、どの段階にいて、どんな情報にどう反応しているのか。
こうした情報が蓄積されて初めて、接点がマーケティング資産になっていきます。
LINEを導入することが目的ではない
今回のSTVの事例を見て、「うちもLINEを始めよう」だけで終わってしまっては、本質を捉えられていません。
LINEはあくまで接点を維持する手段の一つです。
考える順番としては、

です。
例えば生前対策分野であれば、「親が70歳を超えたら確認したいこと」「認知症になる前に家族で話しておきたいこと」といったコンテンツを入口にする。
そこから簡単なチェックリストや診断につなげ、結果をLINEで受け取ってもらい、その後も継続的に情報を届ける。
回答内容や閲覧テーマから、「遺言に関心がある」「不動産の処分を考えている」といったニーズを把握する。
そして、必要性が高まったタイミングで個別相談につなげる。
ここまで設計して初めて、LINEやコンテンツが「集客の仕組み」になります。
将来の相談母集団を、自社で持てるか
今後、相続・生前対策分野で重要になる経営指標の一つは、「自社が何人の相談前顧客との接点を持っているか」ではないかと思います。
検索や紹介から生まれる関係は、検索された瞬間、紹介された瞬間からしか始まりません。
一方、自社で接点を持っていれば、相談が必要になる数か月前、場合によっては数年前から関係をつくることができます。
これは、受任した顧客との関係を手続完了で終わらせず、二次相続や生前対策へ広げてLTVを高める考え方と同じです。
顧客との関係が始まる時点そのものを、「相談後」から「相談前」へ広げるという発想です。
相続マーケティングを「相談獲得型」から「顧客育成型」へ
この2つは、地域メディアの新規事業として見ることもできます。
ただ、士業事務所の経営という視点から見ると、示唆はもっと大きいと思います。
相続・終活の入口は、専門家への相談から始まるとは限りません。
情報を見る。
診断してみる。
LINEに登録する。
家族で考える。
こうした小さな接点の先に、専門家への相談があります。
だからこそ、士業事務所が今後つくるべきなのは相談フォームだけではなく、相談が発生する前の顧客とつながり、関係を継続し、ニーズの変化を把握できる仕組みです。
今回の地域メディアの動きは、「相談獲得型」から「顧客育成型」への転換を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
見込み顧客との接点を、相談につながる仕組みに変える
Samikaでは、LINEやコンテンツを活用して見込み顧客との接点を継続し、相談ニーズが生まれるタイミングを捉える仕組みづくりを支援しています。
士業事務所向けLINEマーケティングシステム「サズカルステップ」では、登録、継続配信、タグ管理、ニーズ把握、相談化までを一連の顧客フォローとして設計できます。
相談件数を増やすだけでなく、将来の相談母集団そのものを事務所に蓄積していきたいとお考えでしたら、サズカルステップの詳細はこちらをご覧ください。
サービスの概要は、1分15秒の紹介動画でご覧いただけます。
▶ https://youtu.be/Lb_SGVZFW6o
詳細・資料ダウンロードはこちら
▶ https://sazukarustep.jp/
参考情報
- 札幌テレビ放送株式会社「放送局が明るく楽しい終活のお手伝い『STVシニアサポート』開始!」
- STVシニアサポート公式サイト
- 株式会社想ひ人「想ひ人、新潟日報社『オープンイノベーションプログラム2026』に採択」
