登記情報の読み取りと登記申請書の下書き作成|相続業務の生成AI活用事例④

2026.10.06 14:23

私たち株式会社Samikaには、相続や生前対策業務に取り組む士業事務所の先生方から、生成AIを使って業務を効率化できないか、というご相談が寄せられています。
この連載では、実際の支援事例をもとに、生成AIと定型処理をどう組み合わせ、スタッフの作業を減らしているかをご紹介しています。
第4回は、登記情報の読み取りと登記申請書の下書き作成です。相続登記を中心に年間約1,000件の相続手続きを手がける司法書士法人様の事例をご紹介します。

 

 

正確さが求められる、不動産情報の転記

相続登記では、不動産の所在、地番、地目、地積、家屋番号、床面積等を、協議書、委任状、申請書へ書き写します。転記の誤りが補正等の原因になるため、数字や表記を正確に扱う必要があります。
自宅のほかに畑、山林、共有の私道等があると、物件が十数件に及ぶ案件もあります。原本と入力画面を何度も往復し、桁や文字を間違えないように打ち込み、別の資料から評価額も探す。慣れたスタッフでも集中力を使う作業です。物件が増えるほど、転記を続ける疲れと、入力後に確かめる手間も重なります。
この事務所様では、情報を拾って入力する作業に生成AIを使い、定型処理で不動産の表示や申請書の下書きを作ります。資料の照合と、案件に応じた判断は人が担う形です。

 

 

登記情報のPDFから、申請書の下書きまで

ここからは、実際に動いている画面でご紹介します(画面の案件・氏名・住所・物件は、すべて説明用のダミーです)。

 

 

登記情報を読み取る

登記情報や権利証のPDFから、生成AIが所在・地番・地目・地積・家屋番号・床面積等を読み取り、入力欄に反映します。複数のPDFも順に処理し、ページ数の多い資料は区切って読み取ります。取り込んだPDFは案件フォルダに保存されるため、確認時に根拠資料へ戻れます。権利証を使う場合は、現在の登記情報との照合が必要です。
固定資産評価証明書や課税明細書も取り込めます。生成AIが書類を分類し、登記情報で登録した物件へ評価額を反映します。以前は評価証明を別の物件として追加してしまうことがあったため、処理を分けました。物件を探して金額を入力する手間は減りますが、どの不動産の評価額か、対象年度や項目が合うかは人が照合します。
書き方の細かな違いは、定型処理でそろえます。例えば地積が「165:28」と表記されている場合は「165.28」に整えます。担当者が物件ごとに表記を直す作業を減らし、元の数値との照合を進めやすくしています。
読み取った情報から、不動産の各項目を並べた表示と、「〜の土地」「〜の建物」とする簡略な表示を作れます。確認した物件情報は、第2回の遺産分割協議書にも再利用します。書類が変わるたびに長い地番や家屋番号を入力し直す手間が減り、必要な表示を選んで確認する作業に進めます。

 

 

登記申請書の下書きを作る

次に、取得する相続人と管轄法務局を選び、対象物件と評価額の一覧を確認します。物件の漏れや取り違えがないかを確かめ、管轄が分かれる場合は、法務局ごとに下書きを作ります。
取得者の住所・氏名、被相続人の死亡日をもとにした原因の日付、不動産番号、代理人情報も反映します。交付方法等の書き方も選んだ手続きに合わせて切り替えます。登記原因や添付情報が案件に合っているかは、担当する司法書士が確認します。

この事務所様は、申請ソフトからオンライン申請を行っています。ここで出力するのは、その入力を補助する下書きです。項目を入力画面の順に並べることで、担当者が複数の資料から必要な記載を探し回る手間を減らし、順番に入力・確認できるようにしています。
課税価格と登録免許税の計算には、読み取った評価額をもとにした計算式を使い、生成AIに金額を推測させません。実際の申請では、評価年度、持分、免税措置の適用、端数処理等の確認も必要です。固定資産税の課税標準額と、登記に用いる評価額も区別します。

 

 

人が確かめるところは残す

役割を整理すると、次のようになります。

読み取り結果のうち不確実な箇所は画面に表示しますが、印のない箇所も含めて、地番・地積・家屋番号等を原本と照合します。不動産番号や評価額が空欄なら、出力前に知らせます。入力を補助する表示と、人による最終確認を組み合わせています。
金額、管轄、登記原因、添付情報は、申請ソフトで最終確認し、申請は人が行います。転記の負担が減った分を、物件の特定や申請内容の確認に使えるかが、現場で評価したいポイントです。

 

 

先生方の事務所で始めるなら

まずは、申請ソフトにどの項目をどの順番で入力しているかを整理することをおすすめします。スタッフが資料を開き直す箇所、繰り返し打ち込む項目を確認すると、下書きに何をまとめれば作業が減るかが見えてきます。
別の司法書士法人様では、申請ソフトの入力画面と同じ並びで、人物情報を上から順に貼り付けられる一覧を出しています。ソフトごとに入力の流れが違うため、普段の操作に合う形を選ぶと、スタッフも使いやすくなります。
実際の案件で、読み取りから手直し、原本照合、申請ソフトへの入力まで試してみます。生成の速さだけでなく、確認を含めて負担が減るかを見ます。評価証明等をそろえる時期や、持分・免税等を確認する担当者も、先に決めておくと進めやすくなります。

 

 

まとめ

登記情報や評価額の読み取りをAIで補助し、定型処理で不動産の表示と申請書の下書きを作ります。スタッフが資料を往復し、数字や文字を何度も写す負担を減らしながら、人が原本の照合と申請内容の確認に時間を使える形にしました。
4回を通して共通するのは、読み取りや例外部分の起案に生成AIを使い、共通情報や定型文は再利用することです。スタッフの繰り返し作業を減らし、専門的な判断と確認につなげます。
番外編では、金融機関ごとに異なる相続手続きの用紙へ、案件情報を印字する事例をご紹介します。
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執筆者のご案内

川崎 啓
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓

東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。


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