
私たち株式会社Samikaには、相続や生前対策業務に取り組む士業事務所の先生方から、生成AIを使って業務を効率化できないか、というご相談が寄せられています。
この連載では、実際の支援事例をもとに、生成AIと定型処理を組み合わせ、スタッフの作業を減らす方法をご紹介しています。今回は、同じ案件情報を複数の書類に使う事例です。
第3回は、委任状や送付状などの書類の作成です。ご紹介するのは、第1回と同じく、相続登記を中心に年間約1,000件の相続手続きを手がける司法書士法人様の事例です。
1件の相続で、同じ情報を何度も書いている
相続手続きを1件受任すると、作る書類は相続関係説明図や遺産分割協議書だけではありません。登記の委任状、評価証明を取るための委任状、戸籍を郵送で請求するときの送付書、金融機関や証券会社に送る送付状、お客様への送付書、完了書類の表紙と、細かな書類がいくつも続きます。
書類の内容が定型的でも、被相続人の氏名や最後の住所、相続人の氏名と住所を、様式ごとに入力する手間は残ります。何枚もWordを開いて同じ情報を打ち込み、中断したらどこまで終えたか確かめる。担当するスタッフには、単純な入力以上の負担があるのではないでしょうか。
入力を繰り返すほど、書類間の食い違いや転記間違いにも気を配る必要があります。この事務所様では、共通の情報を1か所で確認し、複数の書類へ使う流れに見直しました。案件ごとの追記や修正を行いながら、同じ情報の再入力を減らすことが目的です。
確認した情報をまとめ、複数の書類へ
ここからは、実際に動いている画面でご紹介します(画面の案件・氏名・住所は、すべて説明用のダミーです)。
面談シートを取り込む
起点は、事務所で使っているWordの面談シートです。取り込むと、受任内容、遺産の概要、分割内容等が項目ごとに表示されます。面談シートを見ながら各欄へ写し直す作業を減らし、担当者は取り込まれた内容の確認から進められます。
Wordに入力された文字は、そのまま取り出しています。生成AIは戸籍や登記情報等の読み取りが必要な資料に使い、面談シートの取り込みと定型書類への差し込みは、決まった処理で行います。
受任内容・遺産の概要・分割内容は、色を変えて「要確認」と表示します。画面で修正した情報が、その後に作る書類へ反映されるため、書類ごとに直す手間を減らせます。すでに出力した書類がある場合は、修正後の情報との整合も確認する運用が必要です。
委任状がボタン1つで出る
案件情報を確認し、必要な相続人を選ぶと、委任状を出力できます。遺産整理の委任状では、被相続人の最後の住所・氏名・生年月日・死亡日と、委任する相続人の住所を自動で差し込みます。
照会先の金融機関は、面談シートの「遺産の概要」から候補を拾います。画面の例では、ゆうちょ銀行・みずほ銀行・野村證券の3つです。担当者は候補を確認し、不足や取り違えがあれば修正します。
委任者の氏名は自署・押印のため、委任日も既定では空欄にしています。作成日と署名日が異なることがあるためです。こうした書き方も事務所の様式に合わせてそろえ、作るたびに日付を消すなどの手直しを減らします。
登記、法定相続情報、評価証明取得の委任状も、委任する相続人や代理人を選び、それぞれの様式で出します。担当者は同じ住所を繰り返し打ち込む作業から、委任内容と必要な記載が案件に合っているかを確かめる作業へ進めます。
金融機関・証券会社あての送付状
財産調査では、金融機関や証券会社ごとに送付状を付けて書類を送ります。この事務所様では、証券会社・銀行・信託銀行・保険会社など26種類の送付先の様式を用意しています。
送付先を選ぶと、1通ずつ別のファイルで送付状ができます。同封書類や支店名等は案件に合わせて手直しします。複数のひな形を開き、共通情報を差し替えて保存する手間が減り、同封物と送付先の確認に時間を使いやすくなります。ファイル名には送付先名が入り、案件フォルダに保存されるので、書類も探しやすくなります。
人が確かめるところは残す
相続関係説明図や協議書も含め、対応する書類は約20種類です。面談シート、戸籍、登記情報から案件情報をまとめ、その情報を各様式へ差し込む流れです。
作成後は、氏名・住所に加え、委任内容、代理人、送付先、同封書類を人が確認します。自署・押印等も、提出先の要件に沿って行います。共通情報を正しく入力しておくことと、案件ごとの内容を確かめることを、両方とも確認手順に組み込みます。
金融機関名は面談シートの書き方で候補がずれることもあります。入力し直す回数が減っても、候補の確認は必要です。スタッフが何枚もの書類を作りながら確認していた内容を、出力前の案件画面でまとめて確かめられるようにしています。
先生方の事務所で始めるなら
まずは1件の案件で作る書類を並べ、同じ氏名や住所を何回入力しているかを見てみることをおすすめします。スタッフに、面倒な転記や、修正のたびに開き直す書類を聞くと、優先して取り組む工程が見えてきます。
使用頻度が高く、共通情報の多い書類から始めると、負担の変化を確かめやすくなります。白紙の様式と記入済みの見本を用意し、自署する欄、空欄で出す欄、案件ごとに直す欄も整理します。
面談シートや受付票の項目名・順番をそろえることも有効です。取り込む情報がそろうと、担当者による入力のばらつきを減らせます。入力、出力、確認まで実際に試し、今より作業が楽になるかをスタッフと確かめながら進めます。
まとめ
委任状・送付状では、確認した案件情報を再利用し、同じ内容を何度も入力する作業を減らしました。生成AIによる読み取りと定型処理をつなぎ、スタッフが書類を次々に作る手間を軽くしながら、委任内容や同封物の確認に時間を使える形にしています。
次回は、登記情報や権利書を読み取り、不動産の表示と登記申請書の下書きまでを作る事例をご紹介します。
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