
私たち株式会社Samikaには、相続や生前対策業務に取り組む士業事務所の先生方から、ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIを使って業務を効率化できないか、というご相談が寄せられています。
ご支援している事務所では、生成AIと定型処理を組み合わせ、日々の業務を見直しています。この連載では、実際の事例をもとに、スタッフの作業がどう変わるかをご紹介します。
第1回は、相続関係説明図と法定相続情報一覧図の作成です。
ご紹介するのは、相続登記を中心に、年間約1,000件の相続手続きを手がける司法書士法人様の事例です。
図づくりの手間は、戸籍の読み取りと転記にある
相続関係説明図や法定相続情報一覧図を作るには、作図の前に戸籍から人物の情報を拾い、家族関係を整理する必要があります。この準備に時間を取られている事務所もあるのではないでしょうか。
被相続人の出生から死亡までの戸籍、改製原戸籍、除籍、相続人の現在戸籍などを集めると、数十ページになることもあります。氏名、続柄、生年月日、死亡日を拾い、本籍や住所も必要な資料で確認して、図にするための情報をそろえます。
婚姻や転籍で戸籍が分かれ、古いものには縦書きや手書きの記載もあります。同じ人物の情報を何通もの戸籍で確かめ、原本と入力画面を行き来する作業は、慣れたスタッフでも気を使うものです。入力を進めながら、読み落としがないか注意を払い続ける負担もあります。
この事務所様では、戸籍から情報を拾って入力する部分に生成AIを使いました。読み取り結果を整理して表示し、スタッフが一から転記する作業を減らして、原本との照合に時間を使える形を目指しています。
戸籍の読み取りから、図の作成まで
ここからは、実際に動いている画面でご紹介します(画面の案件・氏名・住所は、すべて説明用のダミーです)。
戸籍を取り込む
スキャンした戸籍のPDFを取り込むと、生成AIが内容を読み取ります。被相続人と相続人の戸籍をまとめて入れた場合も、1件ずつ処理します。数ページずつ区切って読み取ることで、ページ数の多い資料も扱いやすくしています。
読み取った戸籍は一覧で表示され、出生から死亡までのつながりや、資料の不足を確認できます。別の被相続人の資料と判定された場合は取り込みを止め、画面で知らせます。スタッフが資料を整理し直す手間を減らし、取り違えにも早い段階で気づけるようにしています。
読み取った家族情報を確認する
氏名、続柄、生年月日、婚姻日、旧姓などは、被相続人と相続人・家族の入力欄に反映されます。附票があれば、そこに記載された住所も読み取ります。人物ごとに情報がまとまるため、各ページから拾った内容を別の表へ入力し直す作業が減ります。
面談で先に入力した内容と戸籍の読み取り結果が違う場合は、戸籍由来の情報を反映し、更新した項目を表示します。担当者は変更箇所を原本と照合し、読み取り違いや人物の取り違えがないかを確かめます。
被相続人より先に亡くなった子など、家族関係を示すために残す人物と、協議書等に記載する相続人は分けて管理します。また、相続関係説明図と法定相続情報一覧図では記載ルールが異なります。例えば相続放棄をした人も法定相続情報一覧図には記載するため、各書類の対象者は資格者が確認します。
事務所の様式で図が出る
確認した情報から、事務所の様式に沿った相続関係説明図を作ります。法定相続情報一覧図と申出書も同じ案件情報をもとに作成できます。ExcelやWordで出力し、配置等は手直しできます。図ごとに氏名や日付を入力し直す手間も減らせます。
手書きの古い戸籍も読み取りの対象にしています。手書きのページは2回読ませて結果を照らし合わせ、2回の結果が食い違った箇所にだけ「要確認」の印を付けます。
60ページの戸籍を使った例では、当初12件あった「要確認」の表示が、読ませ方の見直し後に0件になりました。これは確認の印の出し方が変わった結果で、誤りが0件になったことを意味しません。2回の読み取り結果が一致した箇所も、原本との照合は必要です。
人が確かめるところは残す
生成AIの読み取りには誤りがあり得るため、氏名、日付、本籍等は原本と照合してから図にします。担当者による人物情報の確認と、資格者による相続関係・記載内容の判断を組み合わせる流れです。
「要確認」の印は、注意する箇所を示す目印です。印のない箇所も含めて、提出前に人が照合します。生成AI、定型処理、人の役割を整理すると、次のようになります。
生成AIが読み取りを補助し、定型処理が様式に流し込み、人が内容を確定します。情報を一から拾って何度も転記する負担を減らし、スタッフが確認すべき内容に集中しやすくする組み立て方です。
先生方の事務所で始めるなら
先生方の事務所で始めるなら、様式、対象資料、確認手順の3つを先にそろえると進めやすくなります。
1つ目は、現在使っている2種類の図の様式を、白紙と記入済みの見本で用意することです。普段の書き方で出力できると、スタッフも確認しやすくなります。
2つ目は、読み取る戸籍の範囲を決めることです。まずは活字の戸籍から試し、手書きの戸籍は読み取り結果と原本の照合を確かめながら対象を広げます。
3つ目は、誰が、どの資料と照合し、どの段階で資格者が確認するかを決めることです。作図までの速さだけでなく、手直しと確認を含めた作業量を見て、使い方を調整します。
最初は家族関係が単純な案件から試すのがよいと思います。戸籍には個人情報が含まれるため、利用環境や契約条件、入力データの学習利用・保存の扱いも事前に確認します。現場のスタッフと一緒に、手間が減る部分と確認しにくい部分を確かめながら進めます。
まとめ
相続関係説明図と法定相続情報一覧図の作成では、戸籍から情報を拾う作業を生成AIで補助し、作図を定型処理につなげました。スタッフの転記作業を減らし、人による照合と専門的な判断に時間を使えるようにすることが、この事例のポイントです。
次回は、遺産分割協議書の作成をご紹介します。事務所によって異なる2つの作り方を比べてみます。
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