
経営のご相談をいただく中で、次のような話をうかがうことがあります。
遺言書の作成に力を入れるため、専用ページを立ち上げた。
内容を作り込み、費用もかけた。
それでも、公開から数か月たっても問い合わせがほとんど入らない、というものです。
一方、同じ事務所の相続登記のページには、継続的に相談が入っていることがあります。
作り手もサイトの構造も同じなのに、結果には差が出る。
これは、ページの出来や需要の有無だけで説明できることではありません。
着目したいのは、その業務が、困った人から自発的に「探される業務」なのか、接点を通じて必要性に「気づいてもらう業務」なのかという違いです。
もちろん、すべての業務を明確に二つへ分けられるわけではありません。
同じ遺言書の作成でも、身近な相続トラブルをきっかけに自分から検索する方もいます。
この分類は顧客を固定的に分けるものではなく、業務ごとに、どちらの集客方法へ比重を置くかを考えるための整理です。
探される業務と気づかせる業務
相続登記や相続税の申告などには、相続の発生という明確なきっかけがあります。
手続きを進めなければならず、期限を意識する場面もあります。
そのため、ご本人やご家族が「何とかしなければ」と考え、自分から情報を探す行動につながりやすい業務です。
これに対して、遺言書の作成や生前対策、二次相続への備え、使っていない不動産の整理は事情が異なります。
対象となるのは、今すぐには困っていない方です。
将来への漠然とした不安があっても、「今、専門家に相談しよう」と考えるほど、課題が具体化していないことも少なくありません。
この違いによって、必要な打ち手も変わります。
探される業務では、必要になったときに見つけてもらえることが重要です。
ホームページや検索広告は、その受け皿として機能します。
一方、気づかせる業務は、検索が始まる前に接点をつくる必要があります。
検索されるのを待つだけでは、どれだけ内容のよいページを用意しても、十分に見てもらえない可能性があります。
伸ばしたい業務と集客手段がずれる理由
難しいのは、多くの事務所が伸ばしたいと考えるのが、後者の業務だという点です。
生前対策や二次相続への備えは、相談内容に応じた提案がしやすく、単純な価格比較になりにくい傾向があります。
一度関係ができれば、その後の相続手続きにつながる可能性もあります。
経営上、力を入れたいと考えるのは自然なことです。
ところが、投資先として選びやすいのは、探される業務に向いた手段です。
ホームページや広告、SNSは見積もりを取りやすく、取り組みを始めた実感も得やすいため、「まずページを作る」「とりあえずSNSを始める」という順番になりがちです。
その結果、伸ばしたい業務と選んだ手段がかみ合わないことがあります。
反応が出ないため媒体を変え、写真中心のSNSで難しければ動画を試す。
しかし、対象者との接点のつくり方が変わっていなければ、媒体を替えるだけで大きな改善を得るのは難しいでしょう。
それにもかかわらず、最後は「自事務所には集客力がない」と判断してしまう。
この誤診は避けたいところです。
気づかせる業務ではこちらから接点をつくる

潜在的なニーズを扱う業務では、相談に来るのを待つだけでなく、すでに接点のある方や、接点をつくれる場所へこちらから働きかけることが基本になります。
第一に考えたいのは、過去にご依頼いただいた方への継続的な情報提供です。
相続登記や遺産分割をご依頼いただいた方の中には、今後、二次相続や遺言、不動産の整理を検討する方もいます。
すでに事務所への信頼があり、状況もある程度把握できているため、重要な接点になります。
次に、人が集まる場へ出ることです。
相談会やセミナーに加え、金融機関、不動産会社、保険代理店など、同じ顧客層と日常的に接している事業者との連携も考えられます。
自事務所だけでは出会いにくい方との接点を、連携先と一緒につくる方法です。
対象を特定できる場合は、手紙やDMも選択肢になります。
不動産オーナーや特定エリアの地主の方など、届けたい相手を具体的に描けるのであれば、検索を待たずに情報を届けられます。
これらに共通するのは、相手がまだ明確に認識していない課題を、こちらから見える形にすることです。
「診断」「現状確認」「見直し」といった入口が機能しやすいのも、今の状態を整理することで、将来の問題を自分ごととして考えやすくなるためです。
二つの業務を並行して育てる
ただし、気づかせる業務は、接点をつくってから相談に至るまで時間がかかる傾向があります。
足元の相談件数は探される業務で確保しながら、将来の相談につながる接点も継続的につくる。
二つを並行して進める考え方が現実的です。

施策を検討するとき、最初に決めるべきなのは媒体ではありません。
まず、伸ばしたい業務が探される側なのか、気づかせる側なのかを整理します。
そのうえで、ホームページに何を書くのか、セミナーで何を伝えるのか、過去のお客様にどのような情報を届けるのかを組み立てていきます。
もちろん、気づかせる業務にホームページが不要ということではありません。
相談会やセミナーなどで事務所を知った方が、後から事務所名を検索することは十分に考えられます。
そのとき、事務所の考え方や実績、相談できる内容が伝わるページは、依頼先を検討するうえで重要な判断材料になります。
ホームページは最初の入口だけでなく、相談するか迷っている方の不安を減らす場所としても機能します。
そして、気づかせる業務では、一度できた接点を保てるかどうかも成果を左右します。
手続き中や完了後のお客様に対し、二次相続や遺言、不動産の扱いについて、必要なタイミングで情報を届ける。
日々の業務の中で継続が難しいのであれば、配信や顧客フォローを仕組み化する方法もあります。
まずは、自事務所が扱う業務を「探される業務」と「気づかせる業務」に分け、現在の集客施策がそれぞれの特性に合っているかを確認してみてはいかがでしょうか。
