
相続登記が完了した瞬間、事務所の業務は終わります。
しかし、売れない不動産を相続したご相談者にとっては、そこが問題のスタートラインです。
名義が確定したことで、管理責任も固定資産税も、その方のものとして固定されるからです。
「登記して終わり」が、負動産を次の世代に送る
山林、接道のない土地、境界が不明な土地。
こうした不動産では、名義を移したあとに次の流れが起こります。
売却先が見つからない。
相続土地国庫帰属制度の要件も満たせない。
結果、管理されないまま、次の世代へ再び相続される。
この流れは、相続人の努力不足で起きているのではありません。
【登記業務が「手続の完了」を目的に設計されているため、その先にある出口の相談が、誰にも拾われないまま終わってしまう】という、構造の問題だと思います。
データが示す「手放せない」実態
法務省の統計によると、2026年6月30日時点の相続土地国庫帰属制度の申請件数は5,698件、国庫帰属に至ったのは2,885件です。
注目したいのは地目別の内訳で、山林の申請868件に対し、帰属した森林は193件にとどまります。
また、取下げ1,063件のうち375件は、審査の過程で却下・不承認になることが判明したためのものです。
【山林は、制度の入口に立つこと自体が難しい】というのが実態ではないでしょうか。
民間側のデータも見てみます。
不動産の有償引き取りを手掛けるLandIssues株式会社は2026年8月、累計で引き取った2,000筆超の不動産のうち、山林が6割超を占めると発表しました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000163293.html
同社のサービス利用者557人への調査では、手放した不動産を取得したきっかけの約7割が「相続」、手放した理由の約8割が「相続させたくない」でした。
事前に国庫帰属制度の利用を検討した人は約2割にとどまり、検討したうえで見送った人の過半数が「帰属要件を満たさない」と回答しています。
(すでに処分困難な不動産を抱えていた層への調査であり、相続経験者全体を代表するものではない点には留意が必要です。)
ここで見落とせないのは、手放す動機が「自分が困っているから」だけではなく、【「子どもに相続させたくないから」が大半を占めている】点です。
先生方の目の前にいるご相談者の多くも、同じ思いを口にしないまま面談を終えているのかもしれません。
面談に「物件別の出口診断」を組み込む
打ち手はシンプルです。
相続面談の設計に、物件ごとの出口確認を組み込むことだと思います。
「不動産が何件あるか」ではなく、物件単位で次を確認します。
- 物件種別(宅地・山林・農地・原野・空き家)と、接道・境界の状況
- 固定資産税と年間の管理費、現在の利用状況
- 通常売却や、隣接所有者への譲渡の可能性
- 国庫帰属制度の適合可能性
- 有償引き取りを含む処分の希望と、次世代へ承継させる意思の有無
そのうえで、出口の選択肢を「通常売却 → 隣接所有者への譲渡 → 国庫帰属 → 有償引き取り」の順に整理し、ご相談者と一緒に判断していきます。
有償引き取り事業者へ橋渡しする場合は、費用だけでなく、所有権移転の確実性、契約条件、引き取り後の管理主体、事業者の継続性まで確認する運用が必要です。
ここまで責任を持つからこそ、この一連の支援は無償のおまけにする必要はなく、【遺産整理業務のオプション報酬として設計できる】と思います。
たとえば年間の相続案件が100件規模の事務所で、不動産を含む案件のうち1割に出口支援のニーズがあると想定すると、年間10件前後の新しい商品機会に相当します(モデルケースとしての試算です)。
「相続負動産を手放すお手伝い」も、士業の仕事です
司法書士などの士業が、相続登記の完了で業務を完了させるか、不動産の出口まで並走するか。
この違いは、ご相談者からの信頼と、次の世代からのご相談に、数年単位で効いてくると考えています。
出口診断を組み込んだ面談設計や、報酬設計の具体化をお考えの際は、株式会社 Samikaへお気軽にご相談ください。
