
高齢社会になり相続分野へ参入、注力する士業事務所、他業種が一気に増えました。サポート価格を下げて集客する事務所も目立ち、さらには急速なAIシステムの発達に伴って、単価の下押し圧力は年々強まっています。ところが、その同じ市場の中で、受任単価をむしろ引き上げている事務所が確かに存在します。
同じような相続案件を扱っているのに、単価が倍近く違う。この差は、いったいどこから生まれるのでしょうか。
ここでいう「同じ相続案件」とは、相続登記や遺産分割協議書作成など、入口となる相談内容が似ている案件を指します。
しかし、初回相談の中でどこまで課題を把握し、どこまで提案できるかによって、最終的に受任する業務範囲と単価は大きく変わります。
本記事では、単価が上がる事務所と上がらない事務所を分ける「構造の違い」を解き明かします。
価格破壊の時代に、なぜ単価が上がる事務所があるのか
まず押さえておきたいのは、単価の差は「事務所の手続きアウトプットの品質、資格者として能力」ではない、という点です。もちろん、各事務所ごとに対応品質や専門性の差はあります。
ただ、相続登記や基本的な相続手続き業務だけで比較される限り、顧客から見ると違いが伝わりにくく、価格比較に巻き込まれやすくなります。
それでも単価が大きく違うのは、「何を売っているか」が根本的に異なるからです。
単価の低い事務所は、目の前の手続きを一つひとつ切り売りしています。
単価の高い事務所は、相続をめぐる一連の課題をまとめて引き受けています。売っているものが「作業」なのか「解決」なのか。この違いが、そのまま単価の差となって現れます。
「手続き単体」で売る限り、単価は上がらない
手続きを単体で売るモデルには、構造的な天井があります。相続登記の相場、遺産分割協議書作成の相場というように、作業ごとの価格はすでに市場で決まっているからです。そこで勝負する限り、他事務所との比較は価格に集約され、値下げ競争から抜け出せません。
実際、スタート段階の事務所の相続受任単価は、~15万円のレンジに収まります。これは「手続きをいくつ積み上げたか」で単価が決まっている状態です。ここから単価を引き上げるには、売り方そのものを変える必要があります。
単価が高い事務所は「高く売っている」のではなく「受任範囲が広い」
ここで誤解してはいけないのは、単価が高い事務所が、同じ手続きを高く売っているわけではないという点です。
単価が高い事務所は、初回相談の段階で相続全体の状況を整理し、相続登記だけでなく、遺産整理、二次相続対策、遺言、財産管理、死後事務など、相談者にとって必要な支援を見極めています。
つまり、単価差の正体は「価格設定の差」ではなく、「課題把握の深さ」と「提案できる業務範囲の差」です。
単価を引き上げる2つの設計(面談誘導率 × 追加提案)
単価を上げている事務所には、共通する2つの設計があります。
一つ目は、面談誘導率を高めることです。問い合わせを電話やメールだけで完結させず、面談の場へ引き上げる。伸びている事務所では、この面談誘導率が60〜70%に達します。面談で相続全体の状況を丁寧に聞き取れるからこそ、必要な提案の幅が広がります。
二つ目は、相談者本人も気づいていない課題を整理し、必要な支援を提案できる設計を持つことです。目の前の手続きだけでなく、相続手続完了後の生前対策や二次相続への備えまで視野に入れて提案する。面談で信頼を得たうえで提案するため、押し売りにはなりません。単価は値付けで上げるものではなく、面談と提案の設計によって自然に上がっていくものです。
この2つを回すことで、相続手続の平均受任単価は25~30万円のレンジへと移っていきます。
遺言執行の提案設計が、相続案件の受任単価・LTVを大きく変える
追加提案の中でも、単価への影響が大きいのが遺言執行です。遺言の作成支援にとどまらず、執行まで引き受ける設計にすると、一件あたりの報酬は大きく伸びます。レポートで分析した事務所の中には、遺言執行の付帯によって一件で100万円を超える案件が生まれているケースもあります。
しかも遺言執行は、相続が発生するまで関係が続くため、長期的な顧客接点にもなります。上位の事務所では、この遺言執行の付帯率を90%近くまで高めています。
遺言執行は将来の売上であって、今すぐに売上に繋がる業務ではないため、重要視していていない事務所様も少なくないですが、3~5年度などさらに競争が激化している市場の中で、価格競争に巻き込まれない「遺産整理業務の生前予約」だと考えることもできます。
遺言執行まで設計に入れた瞬間、その案件は手続きの価格競争とは別の土俵に移ります。
単価アップは“才能”ではなく“仕組み”で再現できる
ここまで見てきた単価アップは、特別なセンスや交渉力で実現しているわけではありません。面談に引き上げ、相続全体を聞き取り、必要な提案を重ね、執行まで設計する。この一連の流れを仕組みとして整えれば、誰が対応しても再現できます。
逆に言えば、仕組みがないまま個人の頑張りだけに頼っている限り、単価は安定して上がりません。問い合わせ対応や顧客フォローを仕組み化することは、単価を底上げするための土台になります。
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