「今じゃない」が生む機会損失の構造
相続手続きを終えたばかりのお客様に、次の相続(二次相続)の提案をするのは難しい。
これは多くの士業事務所が抱える共通の悩みです。
「お父様の相続手続きが終わったばかりなのに、今度はお母様が亡くなったときの話をするなんて...」
「営業っぽく思われたくない」
「でも、今のうちに対策しておかないと将来大変なことになるかもしれない」
こうした葛藤の中で、結局二次相続の提案ができないまま、お客様との関係が途切れてしまう。そして数年後、実際に二次相続が発生したときには、別の事務所に相談されてしまう。
支援先の士業事務所を対象に実施した調査では、「相続登記の受任者のうち、二次相続まで受任できているのは8%程度」という結果が出ています。
一方で、継続的な顧客フォロー体制を構築した事務所では、二次相続の提案率を50%まで引き上げることに成功しています。
その違いは何でしょうか。
二次相続提案が出来ない「事務所側/顧客側」の理由
事務所側が直面する構造的課題
相続手続きの現場では、以下のような構造的な課題が二次相続提案を阻んでいます。
1. 既存業務で手一杯、追加提案の余裕なし 相続登記や相続税申告の手続き中は、お客様も書類集めや遺産分割協議で精一杯。事務所側も期限のある手続きを優先せざるを得ず、「今は手続きを無事に終わらせることに集中」という状況になります。そんな状態でさらに事務所の業務を増やすことに大きな抵抗感を抱えることになり、二次相続提案が進まない大きな理由になります。
2. 信頼関係への配慮 「せっかく信頼していただいて依頼を受けたのに、追加の提案をすることで顧客との関係性を損ねたくない」という意識も働きます。
特に紹介案件の場合、紹介元への影響を考慮すると、より慎重な対応が求められます。
3. 説明の複雑さと時間的制約 二次相続対策の重要性を適切に伝えるには、配偶者の税額軽減を使った場合のシミュレーション、小規模宅地等の特例の適用可否、遺留分への配慮など、多角的な説明が必要です。
限られた面談時間でこれらを網羅するのは現実的ではありません。
顧客側の受け入れ準備不足
一方、お客様側にも二次相続提案を受け入れにくい背景があります。
1. 感情的な整理がついていない
大切な家族を亡くしたばかりの段階で、次の相続の話をされても、感情的に受け入れる準備ができていません。「まだ母は元気なのに...」という抵抗感は自然な反応です。
2. 問題の実感がない
一次相続で配偶者の税額軽減を使って相続税がゼロになった場合、「うちは相続税がかからなかった」という認識で止まってしまい、二次相続での課題を実感できません。実際には、二次相続時に想定外の税負担が発生するケースは少なくありません。
3. 先延ばし心理
「まだ時間がある」「その時になったら考える」という先延ばし心理も強く働きます。しかし、相続対策は時間をかけて準備することで選択肢が広がります。この「時間の価値」が伝わりにくいのが実情です。
LINEのステップ配信を活用して、段階的に二次相続の必要性を訴求する
導入事務所の成功事例
こうした課題に対して、LINEを導入している支援先事務所では、以下のような仕組みを構築しています。
1. 受任時のLINE友だち登録
相続税申告を受任した段階で、「手続きの進捗連絡や、今後の相続・資産管理に関する情報提供のため」という理由でLINE友だち登録をお願いします。この段階では二次相続の話は一切しません。登録率を高めるため、「相続手続きチェックリスト」などの特典も用意しています。
2. 顧客情報との紐付け
登録いただいたLINEアカウントを、事務所の顧客管理システムと紐付けます。これにより、「相続税申告受任者」というセグメントで自動的にステップ配信が開始されます。
3. 段階的な情報提供
ステップ配信は以下のような流れで設計されています:
- 第1〜3回:「相続手続き完了後の必要な手続き」「準確定申告の注意点」「相続財産の名義変更チェックリスト」など、今すぐ役立つ実務情報
- 第4〜6回:「相続した不動産の活用方法」「遺産の運用・管理のポイント」「相続税還付の可能性」など、資産価値を守る情報
- 第7〜9回:「なぜ二次相続対策は早めが有利か」「配偶者の相続で注意すべき3つのポイント」「二次相続シミュレーション事例」など、気づきを促す情報
- 第10〜12回:「遺言書作成のベストタイミング」「生前贈与の効果的な活用法」「家族信託という選択肢」など、具体的な対策情報
各配信の間隔は1週間程度。顧客にとって関心度の高いテーマのコラムには返信があったり、個別相談申込に繋がります。
仕組み化による3つのメリット
1. スタッフの業務効率化と心理的負担の軽減
二次相続の教育的情報提供をシステムが自動で行うため、スタッフは目の前の手続き業務に集中できます。
「いつ、どのように提案すべきか」という判断の負担もなくなり、サービス品質の標準化にもつながります。
2. お客様の自然な理解促進
押し売り感なく、お客様のペースで情報を受け取れます。
実際に「LINEで配信された内容について詳しく聞きたい」という問い合わせから、遺言書作成や家族信託の相談につながるケースが増えています。
3. 継続的な接点の維持と関係性の深化
手続き完了後も定期的な情報提供により接点が続くため、事務所への信頼感が醸成されます。
また、定期的な情報提供を通じて「相談できる専門家」としてのポジションが確立され、二次相続発生時の受任率向上につながります。
実際の成果
支援先のA税理士事務所(年間相続税申告50件規模)では、この仕組みを導入してから6ヶ月で以下のような成果が出ています:
- 相続税申告受任者のLINE登録率:78%(40件中31件)
- ステップ配信経由での二次相続相談率:23%(導入前8%から約3倍)
- 遺言書作成の追加受任:年間12件(導入前3件から4倍)
- 相続関連売上に占める二次相続・生前対策の割合:35%(導入前15%)
特筆すべきは、これらの成果が「営業活動の強化」ではなく「情報提供の仕組み化」によって達成されており、事務所スタッフの労力は殆ど変わらず達成出来ているという点です。
まとめ:タイミングに頼らない提案の仕組みづくりへ
二次相続提案が進まない本質的な理由は、事務所の体制面にあることが殆どです。
相続手続き中は業務に追われ、手続き完了後は顧客との接点が途絶える。
この構造的な課題を解決するには、お客様との継続的な関係性の中で、価値ある情報を提供し続ける仕組み、さらにそれを自動化して継続して続けることが必要です。
LINEを活用したステップ配信は、事務所側の「提案したいけど、継続的なフォローの仕組みがない、これ以上スタッフに負担をかけられない」という課題と、お客様側の「今は考えられない」という状況の両方に配慮しながら、段階的に必要な情報を届ける仕組みです。
この仕組みの本質は、「営業」ではなく「価値提供の継続」にあります。
お客様にとって本当に必要な情報を、受け入れやすいタイミングで提供することで、結果として二次相続への備えが進む。
この順序を守ることが、持続的な成果につながります。
二次相続提案で課題を感じている事務所は、まずは現在の顧客フォロー体制を見直し、継続的な情報提供の仕組みを検討してみてはいかがでしょうか。

