
葬儀社連携というと、「相続案件を紹介してもらう窓口づくり」を思い浮かべる先生方が多いのではないでしょうか。 近年はさらに一歩進んで、葬儀の事前相談・事前予約の獲得につながる生前対策や終活相談を、葬儀社と一緒に育てていきたいという動きも広がっています。 遺言、死後事務委任、任意後見、家族信託といった相談への入口になり得る以上、この流れ自体は自然なものだと思います。
ただ、最近公表された調査を見ると、順番を考え直したくなるデータが並んでいます。 顧客が実際に最も切実に困っているのは、生前ではなく、葬儀後すぐに一気に押し寄せる相続手続き・役所手続き・遺品整理だからです。
調査が示す、葬儀後の遺族の本当の困りごと
株式会社NEXER Groupと斎場白島会館が実施した「葬儀後の手続き・アフターフォローに関する調査」(2026年7月公表・有効回答175名)では、葬儀後に不安・負担を感じた項目として、次の結果が出ています。
- 相続手続き:50.3%
- 役所・公的機関での手続き:43.4%
- 法要・年忌法要の手配:40.6%
- 遺品整理・家財の処分:40.0%
注目したいのは、相続手続きが50.3%で最多である点だけではありません。 役所手続き、法要、遺品整理が、いずれも4割前後で並んでいる点です。 つまり遺族は、相続手続き「だけ」に困っているのではなく、葬儀後に同時多発的に発生する手続き・整理・判断の全体に直面しています。
ここから言えるのは、士業事務所が相続登記や遺産整理だけを切り出して説明しても、遺族の実感とはずれてしまうということです。 葬儀後の手続き全体の中で、自分たちがどこを支援でき、どこは他の専門家や葬儀社の領域なのかを整理して示すことが、まず必要になると思います。
なぜ「専門家を紹介します」だけでは機能しにくいのか
同調査では、葬儀社のアフターサポートについても聞いています。
- 葬儀社の葬儀後サポートを実際に利用した人:8.0%
- 内容まで詳しく知らなかった/まったく知らなかった人:65.7%
葬儀社側がアフターサポートを用意していても、遺族には十分に届いていない可能性がある、ということです。 これは葬儀社の怠慢ではなく、構造の問題だと考えています。
- 遺族が、そもそもサポートの存在や内容を知らない
- 葬儀担当者が、いつ・誰に紹介すべきか判断しにくい
- 遺族が、今すぐ専門家に相談すべき内容かどうかを判断できない
- 葬儀直後で、心理的な余裕がない
- 士業に相談する前に、まず何を整理すればよいか分からない
紹介導線だけを置いても、遺族の側に「相談できる状態」が整っていなければ、利用率8.0%という数字は変わりにくいのではないでしょうか。
遺族が最初に求めているのは「時系列のガイド」と「相談窓口」
では、遺族は何を求めているのか。 同調査の「遺族が求める支援」では、次の順になっています。
- やるべき手続きを時系列で示すガイド・チェックリスト:44.0%
- いつでも相談できる窓口:40.0%
- 弁護士・司法書士・税理士などの紹介や助言:26.9%
専門家の紹介そのものは3番目です。 遺族が最初に求めているのは、「まず何を、いつまでに、どの順番でやればよいか」を整理してくれる支援だと読み取れます。 参考データとして見ても、この順位は多くの先生方の実務感覚と一致するのではないかと思います。 初回相談に来られる相続人の多くが、個別の手続きの依頼より先に、「何から手を付ければいいのか」を聞きに来られるからです。
士業事務所が葬儀社連携で提供すべき本当の価値
ここまでを踏まえると、葬儀社連携で士業事務所が提供すべき価値は、「紹介の受け皿になること」ではなく、次のような整理役だと考えられます。
- 葬儀後に必要な手続きを時系列で整理する
- 相続放棄、準確定申告、相続税申告、相続登記などの期限を見える化する
- 遺族が自分でできる手続きと、専門家に相談すべき手続きを切り分ける
- 司法書士・税理士・弁護士・不動産会社それぞれの出番を整理する
- 葬儀社スタッフが安心して案内できるチェックリストを用意する
- 紹介前の同意取得や、紹介後の対応状況の共有まで仕組みにする
言い換えると、士業事務所は単なる専門家紹介の受け皿ではなく、葬儀後の遺族フォローを仕組み化するパートナーとして葬儀社と組む、ということです。
具体策:「葬儀後90日間の相続手続き支援導線」を一緒に作る
具体的には、葬儀社と一緒に、次のような時系列の導線を設計することをお勧めします。 制度の網羅解説ではなく、葬儀社スタッフが遺族に渡せる・案内できる実務導線として作るのがポイントです。
葬儀直後〜14日以内
- 役所での基本手続き(死亡に伴う各種届出)
- 年金・健康保険まわりの手続き
- 公共料金や各種契約の確認・変更
葬儀後1か月以内
- 遺言の有無の確認
- 相続人の確認
- 預貯金・不動産・借入金のおおまかな把握
- 遺品整理・家財処分の見通しづくり
葬儀後3か月以内
- 相続放棄の期限確認と、必要な場合の債務調査
- 戸籍収集
- 遺産分割協議の準備
3か月以降
- 相続税申告の要否確認
- 相続登記
- 不動産売却・空き家管理の検討
- 遺産整理の実行
- 二次相続や生前対策の検討への接続
この導線があると、葬儀担当者は「専門家を紹介するかどうか」を都度判断する必要がなくなります。 時期ごとに渡すもの・案内する窓口が決まっているので、遺族への声かけが標準動作になるからです。
生前対策への導線は、葬儀後支援の品質向上の先にある
冒頭で触れたとおり、葬儀社が生前対策や事前相談・事前予約に力を入れたいこと自体は、自然な経営判断です。 士業事務所にとっても、遺言や家族信託などの相談機会が広がるのは歓迎すべき流れだと思います。
ただ、その提案を葬儀社と一緒に進めるうえでも、順番があると考えています。 まず葬儀後の遺族が何に困るのかを理解し、発生後手続きのサポート品質を高めること。 預金凍結、不動産、遺品整理、相続税、相続登記といった葬儀後の不安をきちんと整理できる事務所だからこそ、遺言、死後事務委任、任意後見、家族信託、生前整理、おひとりさま対策といった生前の提案にも説得力が生まれます。
葬儀後の支援が弱いまま生前対策だけを提案しても、葬儀社の現場スタッフも遺族も、その事務所を「頼れる相手」として実感できないのではないでしょうか。
まとめ:紹介をお願いする前に、導線を一緒に設計する
葬儀社連携で重要なのは、単に「紹介をお願いすること」ではありません。 葬儀後の遺族が、何を、いつまでに、どの順番で進めればよいかを整理し、必要なタイミングで適切な専門家へつながれる仕組みを、葬儀社と一緒に作ることです。
相続に取り組む士業事務所が「葬儀後90日間の手続き支援導線」を整えれば、葬儀社にとっても遺族にとっても、単なる紹介先ではなく、地域の相続支援体制を支えるパートナーになっていけると思います。
葬儀社連携を強化するうえでは、誰を紹介してもらうかだけでなく、遺族にどのタイミングで、どの情報を届けるかを設計することが重要です。 Samikaでは、相続分野に取り組む士業事務所向けに、こうした連携導線や顧客フォローの仕組みづくり(「サズカルステップ(LINE公式アカウント拡張システム)」の活用を含む)を支援しています。 自事務所の葬儀社連携を見直したいとお考えの先生方は、お気軽にご相談ください。
【出典】 株式会社NEXER Groupと斎場白島会館による「葬儀後の手続き・アフターフォローに関する調査」 調査対象:事前調査で「喪主を務めた、または葬儀を執り行った経験がある」と回答した全国の男女 有効回答数:175サンプル 調査期間:2026年6月25日〜7月3日(インターネット調査) 出典:斎場白島会館(https://www.so-gi.co.jp/) 該当記事:http://so-gi.co.jp/blog/6976/
※本記事で紹介した数値は上記調査の公表値であり、参考データとしてご覧ください。
