「みらいたすく」が変える相続の入口——相続注力の士業事務所がいま考えるべきこと

2026.04.10 23:18

「みらいたすく」が変える相続の入口|相続注力の士業事務所がいま考えるべきこと


2026年4月8日、日本の相続手続きに大きな転換をもたらす可能性のある動きが公表されました。

SMBC日興証券や野村ホールディングス、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行など主要金融機関グループ10社が、「みらいたすく」という金融機関横断の相続手続き一元化プラットフォームの構築に向け、基本合意書を締結したと発表したのです。

この動きは、相続人の利便性向上を目的としたものですが、相続業務を中心に展開する司法書士・行政書士事務所にとっては、集客構造そのものに関わる変化として捉えるべき出来事です。

本記事では、「みらいたすく」の概要を整理したうえで、この動きが相続専門事務所のマーケティングにどのような影響をもたらすのかを考えてみます。

「みらいたすく」とは何か

「みらいたすく」は、複数の金融機関にまたがる相続手続きを一元化するためのオンラインプラットフォームです。

現在、相続が発生した際に相続人は各金融機関に個別に連絡し、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類を金融機関ごとに用意・提出する必要があります。

これが「みらいたすく」に一本化されることで、相続人はオンラインで一度情報を入力すれば、提携する各金融機関の手続きを一括で進められるようになることを目指しています。

公表されたロードマップによれば、2026年秋頃に新会社を設立し、2027年夏頃に一部地域での試験導入、2028年秋頃に全国提供開始を予定しています。

なお、名称は変更になる可能性があるとされています。

 

相続の「入口」が変わる

このプラットフォームが実装された世界では、相続手続きの最初の接点が「金融機関の窓口やオンラインポータル」になります。

今まで、相続が発生した方の多くは、インターネットで「相続 手続き」「相続登記 司法書士」などと検索し、事務所のホームページにたどり着くというルートで問い合わせをしていました。

しかし「みらいたすく」のような共通基盤が普及すると、一定層の相続人は金融機関のプラットフォームの中で手続きを完結させようとするでしょう。

その中で「専門家のサポートも利用できます」という形で士業が選択肢として提示される構造になれば、集客の主導権は事務所側から離れていくことになります。

これは「そもそも検索するかどうか」という、より上流の行動変容の話です。

 

どのような事務所が影響を受けやすいか

 

① SEO・リスティング広告などWEB集客中心の事務所

「相続手続き代行」「金融機関 相続手続き 司法書士」といったキーワードで流入を得ている事務所は、みらいたすくの普及によって流入量自体が変化するリスクを念頭に置く必要があります。

特に「金融機関ごとの書類提出が大変」という悩みに応える形で集客していた場合、そのニーズ自体がプラットフォームで解消されていく可能性があります。

 

② 標準的な相続手続きの代行を主業務としている事務所

相続手続きの一元化が進むと、「書類の収集・提出・各金融機関との連絡」という業務の社会的需要は縮小していきます。

これは短期的には変化が見えにくくても、2028年の全国展開以降は構造的な変化として表れてくるものです。

 

逆に、この変化を追い風にできる事務所

一方で、この動きをビジネスの縮小ではなく、機会として活かせる事務所も存在します。

 

① 複雑案件・高付加価値領域に強い事務所

みらいたすくが処理できるのは、「標準的な金融資産の相続手続き」です。

不動産を含む案件、相続人間に争いがある案件、二次相続の設計が必要な案件、あるいは生前対策まで含めた包括的なコンサルティングを求めるニーズは、プラットフォームでは対応できません。

むしろ、標準的な案件がプラットフォームで処理されるようになると、事務所に残る案件は相対的に複雑なものが増えていきます。

これを「難しい案件ばかりになった」と捉えるか、「高付加価値案件に集中できる環境が整った」と捉えるか——この視点の差が、事務所の中長期的な経営に影響を与えるかもしれません。

 

② 生前対策・顧客関係設計を武器にしている事務所

生前対策の相談から入る場合、相続発生後の金融機関手続きは「プロセスの一部」に過ぎません。

相談者との長期的な関係を起点にしている事務所にとって、みらいたすくの存在は「手続き部分を効率化してくれる仕組み」として機能する可能性があります。

また、みらいたすくのような基盤が普及した際に「金融機関から専門家を紹介される」側に入れるかどうかは、日頃から信頼性を積み上げてきた事務所かどうかによっても変わってきます。

 

今から考えておくべきこと

2028年の全国展開まで、まだ時間はあります。

ただ、集客構造の転換は「プラットフォームが普及してから対策を考える」では間に合わないことが多いものです。

「相続の入口をどこに持てるか」「標準的な手続き以外のどのような価値を提供できるか」「自事務所の強みをどう言語化し、発信しているか」——こういった問いへの答えを、今のうちに整理しておくことが重要です。

みらいたすくの動きは、相続業務の「手続き代行」という側面の価値が変化していくことを示しています。

この変化を早めに見据えながら、自事務所のポジションを考える材料のひとつとしていただければ幸いです。


執筆者のご案内

川崎 啓
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓

東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。

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