このような課題を感じている事務所は少なくないのではないでしょうか。
実は、相続業務に力を入れれば入れるほど、不動産への対応が避けて通れなくなるという現実があります。
国税庁の統計を見ると、相続財産に占める土地・家屋などの不動産の割合は、おおむね4割前後とされています。
特に都市部では、この割合がさらに高くなるケースも珍しくありません。
つまり、相続業務を扱う以上、不動産の問題はほぼ必ず関わってくるテーマなのです。
実際に、相続分野に注力している士業法人の中には、グループ内に不動産会社を設立するケースも増えています。
これは単なる業務拡大ではなく、相続ビジネスの収益構造を見直す戦略とも言えます。
相続手続きの報酬だけでなく、不動産売却の仲介手数料という新たな収益機会が生まれるためです。
例えば3,000万円の不動産売却であれば、仲介手数料は約100万円程度になります。
これは相続登記報酬と比較すると、数倍以上の収益になることもあります。
ただし重要なのは、一般的な不動産会社と同じビジネスモデルでは必ずしもうまくいかないという点です。
士業事務所の強みを活かした不動産ビジネスモデルを考える必要があります。
最も多くの士業法人が採用しているのが、相続不動産の売却に特化した仲介モデルです。
通常の不動産会社は
・売り物件の獲得
・買主の集客
の両方を行う必要があります。
一方で士業事務所の場合、相続相談という形で「売却案件の入口」がすでに存在しています。
ある司法書士法人では、相続相談者の中で一定割合が不動産売却の相談につながっていました。
この流れを活かし、グループ内に不動産会社を設立したことで、不動産売却案件を安定的に受任できるようになりました。
このモデルの特徴は
相続相談
↓
相続手続き
↓
不動産売却
という流れをワンストップで対応できることです。
顧客にとっても、信頼している士業事務所が最後まで伴走してくれる安心感があります。
自社で不動産会社を持つのが難しい場合は、信頼できる不動産会社と連携する方法もあります。
相続案件では、不動産の売却や活用について相談を受けるケースが少なくありません。
その際に、信頼できる不動産会社を紹介できる体制を整えておくことで、顧客にとってもスムーズに問題解決が進みます。
なお、士業の種類や所属団体のルールによっては、顧客紹介に関する金銭の授受が職業倫理上問題となる場合があります。
例えば弁護士や司法書士の場合、紹介料の受領は懲戒の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
そのため、このモデルでは紹介料を目的とするのではなく、顧客にとって適切な専門家につなぐ「連携体制」を構築することが重要になります。
ただし注意が必要なのは、パートナー選びです。
強引な営業を行う不動産会社を紹介してしまうと、士業事務所の信用に影響する可能性があります。
そのため
- 営業姿勢
- 実績
- 顧客対応
などを十分に確認した上で提携先を選ぶことが重要です。
事務所によっては、不動産売却の代理人として顧客に関与する方法もあります。
相続案件では、司法書士が売主の代理人として売却手続きをサポートし、不動産会社と連携して売却を進めるケースも少なくありません。
近年注目されているのが、いわゆる「負動産」への対応です。
山林
原野
管理困難な空き家
など、売却が難しい不動産の相談は年々増えています。
国土交通省の推計では、所有者不明土地の面積は九州本島に匹敵する規模とも言われており、この問題は今後さらに深刻化する可能性があります。
通常の不動産会社では対応が難しい案件でも、士業の知識を活かすことで解決策を提案できる場合があります。
例えば
・寄付や譲渡の検討
・管理体制の整理
・相続手続きの整理
など、法律や手続きの知識が必要になるケースです。
ただし、権利関係が複雑でトラブルリスクも高いため、十分な知識と慎重な対応が必要になります。
どのモデルを選ぶ場合でも、重要なのは「士業の強みを活かすこと」です。
まず必要なのは、不動産ニーズを把握する仕組みです。
初回相談のヒアリング時に
・不動産の有無
・売却予定
・管理困難物件
などを確認することで、後の相談につながる可能性が高まります。
また、スタッフが不動産の基礎知識を持っていると、顧客の相談により適切に対応できるようになります。
さらに
・不動産相談件数
・売却相談割合
・成約率
などを定期的に確認することで、事務所としての取り組みを改善していくことができます。
相続登記の義務化、空き家問題、所有者不明土地問題など、社会の中で不動産に関する課題は今後さらに増えていくと考えられます。
単に相続手続きを処理するだけではなく、その先にある不動産の課題までサポートできる事務所は、顧客にとって非常に価値のある存在になるでしょう。
今こそ「相続不動産をどう扱うか」という視点で、事務所の事業戦略を見直してみてはいかがでしょうか。
その一歩が、次の成長につながる可能性があります。

