なぜ今、終活業界は不動産にこれほど注目しているのでしょうか。
そしてこの流れを、相続分野に取り組む士業事務所はどう捉えるべきなのでしょうか。
終活相談、身元保証、財産管理、相続サポートなどを提供する企業が、不動産事業に参入する理由はシンプルです。
相続財産の中心が不動産だからです。
国税庁の統計によると、相続財産に占める土地・家屋などの不動産の割合は、おおむね4割前後とされています。都市部では、これが5割を超えるケースも珍しくありません。
そして不動産ビジネスには、相続業界にとって非常に魅力的な特徴があります。
- 1件あたりの売上規模が大きい
- 仲介手数料が数十万円〜100万円を超えることも多い
- 1件の成約が事業収益に大きなインパクトを与える
つまり、不動産は相続市場の中でもっとも大きな経済価値を持つ領域なのです。
そのため、相続分野に取り組む企業の多くが、不動産領域へと事業を拡張しています。
実際に
- 不動産会社をグループ化する
- 不動産仲介会社と資本提携する
- 相続不動産の売却サポートを商品化する
といった動きは、この数年で急速に広がっています。
もう一つ重要な視点があります。
それは、終活サービスが相続市場への入口になりやすいことです。
- 終活相談
- 身元保証
- 財産管理
- 見守りサービス
こうしたサービスは、顧客との接点を長期間持つことができます。
そしてその延長線上には、
相続手続き
- 相続手続き
- 不動産売却
- 資産整理
といった大きなビジネス機会が存在します。
つまり終活サービスは、相続市場の入口ビジネスでもあるのです。
この構造を理解している企業は、終活サービスだけではなく、その先にある不動産・相続ビジネスまでを視野に入れて事業設計をしています。
ただし、この流れには注意も必要です。
最近では、相続相談に行った際に
「まず不動産を売却しましょう」
「この会社で売却できます」
といった不動産営業が、手続きの説明より先に始まるケースも見られるようになりました。
もちろん、不動産の処分が必要になるケースは多くあります。
しかし、相続において本来重要なのは
- 財産調査
- 相続関係の整理
- 遺産分割のサポート
- 将来リスクの整理
といった、顧客の状況を丁寧に整理するプロセスです。
これらのプロセスを経て初めて、不動産をどう扱うべきかという判断が見えてきます。
もしこの順番が逆になり、
不動産営業 → 相続相談
という流れになってしまうと、顧客の信頼は簡単に崩れてしまいます。
相続分野では、「この人は本当に自分のためにアドバイスしてくれているのか」という信頼が、何より重要だからです。
では、相続分野に取り組む士業事務所は、この流れをどう捉えるべきなのでしょうか。
結論から言えば、
不動産を扱うかどうかではなく、どう扱うかが重要です。
相続相談では、不動産に関する課題が非常に多く出てきます。
- 相続不動産の売却
- 空き家問題
- 負動産の処分
- 不動産の共有問題
ある事務所では、相続相談の約7割で不動産の課題が出てくるというデータもあります。
つまり、不動産を無視して相続業務を行うことは現実的ではありません。
重要なのは、次の順番です。
- 相続手続きや財産調査を丁寧に行う
- 顧客の状況を整理する
- 不動産の課題を把握する
- 必要に応じて売却や処分を提案する
- 信頼できる専門家と連携する
つまり
信頼 → 相談 → 不動産
という流れです。
これは
売るための不動産ではなく、解決するための不動産
という考え方でもあります。
相続分野に本気で取り組む士業事務所にとって、不動産をどう扱うかは今後ますます重要なテーマになります。
しかしそれは
「不動産ビジネスをやるかどうか」
ではありません。
本当のテーマは
士業としての信用を守りながら、どう収益化するか
です。
このバランスをどう取るか。
ここに、相続分野で長く選ばれる事務所になるかどうかの分かれ道があります。
不動産は確かに魅力的な収益源です。
しかし士業事務所の価値は、あくまで信用にあります。
信頼関係を築き、顧客の真の課題解決を優先する。
その結果として不動産案件も自然と集まってくる。
この順番を守ることこそが、相続分野で持続的に成長するための王道ではないでしょうか。

