生前対策サポートの報酬設計を見直しませんか

2026.03.27 10:22

ある経験豊富な先生から、こんな相談対応の話を聞きました。

長男・次男の兄弟が事務所を訪れ、「親に遺言を書かせたい。できれば不動産も生前に処分してほしい」と相談に来ました。
次回は親本人も同席させると約束し、説得済みの状態で次の相談に臨んだそうです。

ところが当日、親はまったく納得していませんでした。
「遺言を書くつもりはない」というスタンスで来所されたのです。

先生はその場で現状を丁寧に整理し、対策を先送りした場合に生じうる相続リスクを説明しました。
同種の相談でトラブルになった事例も交えながら向き合った結果、親は翻意。遺言を書き、不動産も処分することを決断されました。

長男・次男は胸をなでおろし、先生に深く感謝したといいます。
では、この先生が受け取った報酬はいくらだったでしょうか。

遺言書作成:15万円。それだけでした。

この話を聞いて、私は「その報酬額は正しいのか」という疑問を持ちました。

 

先生が果たした役割は「手続き」だけではなかった

先生が行ったことは、単に遺言書を作成したことではありません。

  • 相続人間の利害が対立する状況を整理した
  • 乗り気でない本人を、脅しではなく納得によって動かした
  • 生前対策を先送りした場合の具体的なリスクを可視化した
  • 依頼人だけでは達成できなかった結果を実現した

もし先生が介入しなかった場合を想像してみてください。
親が対策を先送りしたまま亡くなれば、複雑な相続手続きが発生します。


不動産の処分は相続後に持ち越され、兄弟間で意見が割れる可能性もあります。
場合によっては調停・訴訟に発展し、弁護士費用が数百万円規模になることも珍しくありません。

先生の介入によって、それらのリスクがすべて回避されました。
生前対策後の相続手続きは、不動産もすでに整理されているため、比較的シンプルに完結します。

その価値が、本当に「15万円」でいいのでしょうか?

 

「コンサルティング報酬」として設計するという考え方

こうした乖離が生まれる背景には、「報酬=実施した手続きの対価」という考え方から抜け出せていないことがあります。

もちろん手続き報酬の基準は重要です。

しかし生前対策・財産管理の領域では、価値の大半は「手続き」ではなく「判断・調整・説得・設計」にあります。
それは士業の専門知識と経験に裏打ちされた、コンサルティングとしての価値です。

報酬設計の選択肢として、たとえば以下のようなアプローチが考えられます。

報酬モデル内容・考え方
 経済的利益連動型 対策によって保全・移転された財産額の数%を報酬とする。
依頼人の利益と報酬が連動するため、納得感を得られやすい
コンサルティング・着手金型 手続き費用とは別に「生前対策設計・調整費用」として着手金を設ける。
関与の深さに応じた報酬として位置づけることができます
 継続サポート型 生前対策後も定期的な状況確認・見直し支援を行い、継続的な関与に対して報酬をいただく。
相続発生時の受任にも自然につながります

「誰が対応するか」も報酬に反映できないか

もう一点、触れておきたいことがあります。

生前対策・財産管理の相談対応は、経験・判断力・ヒアリング力の差がアウトプットの質に直結します。

コンサルティング会社では、担当者の経験・専門性によって費用レンジが異なることは当然とされています。

士業事務所においても、「代表・所長が直接対応する場合は通常報酬の1.3〜1.5倍」といった設計は、検討に値するのではないでしょうか。


「遺言書作成サポート」という商品のまま報酬を上げようとするから難しい。
代表やスペシャリストが対応する領域を、「円満相続サポート」「生前対策コンサルティング」として別の商品として設計する。

そうすれば、報酬の根拠も、依頼人の納得感も、まったく変わってきます。
手続きの代行費用と、家族の未来を設計するコンサルティング費用。
同じ棚に並べる必要はないはずです。

依頼人の側から見ても、「誰が対応してくれるか」は重要な関心事です。
それを報酬に反映することは、むしろ誠実な価値の提示といえます。

 

まとめ:「価値に対していくらもらうか」という視点を持つ

冒頭の先生は、遺言書作成15万円を受け取りました。事務所の報酬基準がそうなっていたからです。

依頼人の長男・次男は深く感謝していました。「もっと払うべきだった」と感じた方もいたかもしれません。しかし請求されなければ、払いようがありません。

生前対策・財産管理の領域で関与が深まるほど、手続き報酬だけでは顧客満足に見合わない状況が生まれやすくなります。

「手続きに対していくらもらうか」から、「自分たちが生み出した価値に対していくらもらうか」へ。その視点の転換が、士業事務所の経営には求められているのではないでしょうか。


執筆者のご案内

株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓

東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている

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