連携先との良好な関係が、実は不均衡を生んでいる
相続マーケティングに取り組む士業事務所の多くが、他業種との連携体制を構築しています。司法書士事務所であれば税理士事務所や不動産会社と、税理士事務所であれば司法書士事務所や金融機関と、相互に案件を紹介し合う関係を築いているケースは珍しくありません。
しかし、コンサルティング支援の現場で事務所経営者とお話しすると、ほぼ必ず出てくる課題があります。それが「紹介件数」と「報酬額」のバランスについてです。

5倍の報酬差が生む、見えない不均衡
具体例で見てみましょう。
司法書士事務所が税理士事務所と連携している場合、司法書士側は相続マーケティングで得られた相続税申告の見込み客を税理士に紹介します。一方、税理士側は相続登記や商業登記の案件を司法書士に紹介する、という相互紹介の関係です。
一見、バランスの取れた連携に見えますが、実際に「報酬額」で見ると大きな差が生じています。
税理士への紹介案件:
相続税申告:1件あたり80万~100万円の報酬
発生頻度:それほど高くない
司法書士への紹介案件:
相続登記:1件あたり10万~15万円の報酬
商業登記(設立等):1件あたり2万~3万円の報酬
発生頻度:比較的高い
つまり、1件あたりの報酬単価で見ると、5倍~6倍の差があるのです。
「件数ベース」の認識が生むズレ
ここで問題になるのが、多くの連携先が「紹介件数ベース」でバランスを考えているという点です。
税理士側としては「司法書士さんには、登記案件を定期的に紹介しているから、しっかり連携できている」と認識しがちです。しかし、報酬額ベースで見ると、司法書士側が紹介する1件の相続税申告案件の報酬は、税理士側が紹介する相続登記案件5件~6件分に相当します。
これは決して、報酬を多く得ている側(この例では税理士事務所)が意図的に不均衡を作っているわけではありません。単純に「紹介案件の総報酬額ベース」で考えているケースが少ないため、お互いに「紹介をしっかりしている」と認識してしまうのです。

不動産会社との連携でも同じ構造
この問題は、司法書士事務所と不動産会社の連携でも見られます。
司法書士側が相続相談から得られた不動産売却の見込み客を不動産会社に紹介し、不動産会社側は不動産登記・決済を司法書士に紹介するという関係です。
しかし、不動産仲介の成功報酬(売買価格の3%+6万円)と、不動産登記の報酬では、やはり大きな単価差が存在します。
自社マーケティングの「成果(紹介案件)」を「武器」として最適化する
では、どうすればこの不均衡を解消し、より健全な連携関係を築けるのでしょうか。
私どもSamikaがコンサルティング支援先に提案しているのは、以下のような管理と最適化の仕組みです。
1. 双方向の案件管理を徹底する
連携先から紹介された案件:件数、相談内容、受任の有無、報酬額
自社から紹介した案件:件数、受任の有無、売上報酬額 これらを各社ごとに管理し、報酬額のバランスを定期的に確認します。
2. 定期的なミーティングで情報共有
連携先とのミーティングで、双方の紹介案件の件数と報酬額を報告し合います。大きな差額がある場合は、バランスを考慮した案件配分を相談することも一つの方法です。
3. 案件振り分けの最適化
報酬額のバランスが取れない連携先については、紹介件数を徐々に調整し、より互恵的な関係を築ける連携先への紹介を増やすという戦略も必要です。
自社マーケティングの価値を見直す
自社のマーケティングで獲得した紹介案件、他社にとっての見込み客は、想像以上に貴重な営業連携のための「武器」です。
この武器の配分を最適化するだけでも、他社経由での紹介案件や報酬額が大きく増える可能性があります。「件数」ではなく「報酬額」という視点で連携を見直すことで、事務所の収益構造は確実に改善していくはずです。


