検索結果からのサイト訪問が激減している
いま、Web集客の前提が大きく揺らいでいます。
長年、私たちの情報収集の起点として機能してきたGoogle検索ですが、ここ数年で検索ユーザーの行動パターンが劇的に変化しています。
調査会社ヴァリューズが国内250万人を対象に実施した調査では、衝撃的なデータが明らかになりました。国内におけるGoogle検索からのウェブサイト訪問数が、わずか2年間で33%も減少しているのです。
さらに注目すべきは、検索後の行動です。2025年9月時点で、Googleの検索セッション数は約61.8億回に上るものの、そこから実際にサイトへ流入したセッションは36.5%(約22.6億回)にとどまっています。つまり、検索の6割以上が、どのサイトにもアクセスせずに完結してしまっているのです。
なぜサイトに訪問しなくなったのか
この現象の背景には、2023年3月頃から本格導入された「AI概要(AIオーバービュー)」の存在があります。
Google検索を使うと、検索結果の最上部に、質問に対する回答がAIによって自動生成・表示されるようになりました。
この要約機能により、多くのユーザーは「とりあえず知りたいことはここで分かった」と判断し、わざわざ個別のウェブサイトまで訪問する必要性を感じなくなっているのです。
業界ではこの状況を「ゼロクリック検索」と呼んでいます。
検索はするが、クリックはしない。情報は得られるが、サイトには来ない。こうした新しい検索行動が、急速に浸透しているのです。
士業事務所のサイトも例外ではない
この変化は、相続や生前対策を扱う士業事務所のWebサイトにも直接的な影響を与えています。
たとえば、「遺言書とは」「相続税の計算方法」「生前贈与のメリット」といった情報検索型のキーワードで検索した場合、以前であればユーザーは複数の士業事務所サイトを訪問し、それぞれの解説ページを読み比べていました。
しかし現在は、検索結果の冒頭に表示されるAI要約が、複数のサイトから情報を抽出して一つにまとめてくれるため、ユーザーは個々の事務所サイトにアクセスする必要がなくなっています。
つまり、どれだけ丁寧に作り込んだ解説コンテンツを用意し、SEOで上位表示を獲得したとしても、AI要約に吸い上げられてしまえば、自社サイトへの訪問には結びつかないという構造的な課題が生まれているのです。
これまで多くの士業事務所が採用してきた「詳しい解説記事でアクセスを集め、そこから問い合わせにつなげる」というSEO中心の集客モデルが、機能しにくくなってきていると言わざるを得ません。

これからのWEB集客戦略をどう組み立てるべきか
では、こうした環境の変化に対して、どのような対応が求められるのでしょうか。
ここで注意したいのは、「SEOや知識コンテンツはもう無意味だ」と短絡的に結論づけてしまうことです。
確かに直接的な流入数は減少していますが、知識コンテンツには別の重要な価値があります。
それは、「この事務所は専門性が高い」という認知を形成すること、そして将来的な指名検索や紹介につながる信頼の土台を作ることです。
AI検索で要約されたとしても、「あの事務所は詳しく解説していた」という記憶は残ります。
いざ本格的に相談したいと思ったとき、「そういえば、あの事務所のサイトが充実していたな」と思い出してもらえる可能性があるのです。
重要なのは、知識コンテンツの役割を正しく理解した上で、複数の集客チャネルを組み合わせた多層的な戦略を構築することです。
第1層:知識コンテンツによる信頼構築
引き続き、相続や生前対策に関する基本的な情報提供ページを充実させ、検索エンジンでの露出を確保することは重要です。
ただし、その目的は「大量のアクセスを集めること」ではなく、「専門家としての信頼を獲得すること」「将来的な想起につながる印象を残すこと」に置き換えて考える必要があります。
AI検索に情報を提供するつもりで、質の高い解説コンテンツを発信し続けることで、間接的な認知形成と信頼構築を実現するのです。
第2層:「今すぐ相談したい層」へのアプローチ
ここからが、今後特に力を入れるべき領域です。
従来のように「アクセス総数」を追うのではなく、「相談・依頼の意欲が高い見込み客」からのアクセスをいかに獲得するかに焦点を移す必要があります。
そのために有効なのが、サポート内容を絞り込んだ専門特化型のランディングページと、そこへ見込み客を誘導するための戦略的な広告運用です。
専門特化型ページの設計
「相続全般」といった広いテーマではなく、「相続放棄の手続き代行」「自筆証書遺言の作成支援」「生前贈与の税務相談」など、サービス内容を具体的に絞ったページを用意します。
こうしたページを訪れる人は、すでに基礎知識はある程度持っており、「自分では手続きが難しい」「専門家の力を借りたい」という明確なニーズを抱えている層です。
つまり、「●● 手続き 代行」「●● 相談 司法書士」「●● サポート ●●市」といった、依頼の意図が明確なキーワードで検索している人たちです。
リスティング広告の精緻な運用
こうした専門特化型のページは、構造上、自然検索での上位表示が難しい傾向にあります。そのため、リスティング広告による集客が中心になります。
ただし、闇雲に広告を出稿するのではなく、以下のような「絞り込み」が重要です:
検索語句の厳選 「相続とは」「遺言書 種類」といった情報収集段階のキーワードは、むしろ除外キーワードとして登録し、広告が表示されないようにします。予算を無駄に消費せず、確度の高い検索語句にのみ広告費を投下します。
年齢層の限定 相続・生前対策というサービスの性質上、ターゲットとなる年齢層は比較的明確です。若年層への広告露出を抑制することで、より効果的な予算配分が可能になります。
配信エリアの最適化 実際に来所が現実的な範囲に広告配信を限定することで、「問い合わせは来たが対応できない」という無駄を省けます。
マッチタイプの調整 広範なマッチング設定で無関係な検索にまで広告を表示させるのではなく、フレーズ一致や完全一致を中心に運用することで、クリック単価の無駄遣いを防ぎます。
地域密着型のSEO対策も併用
広告だけでなく、「サービス名×地域名」の組み合わせであれば、専門ページでも自然検索での上位表示を狙える可能性があります。
「相続放棄 ●●区」「遺言作成 相談 ●●市」といったローカル検索に対応したページ作りを並行して進めることで、広告費をかけずに確度の高いアクセスを獲得できる導線も確保できます。
第3層:「そのうち客」との接点維持
AI検索で情報収集をしている人の中には、「今すぐ相談したいわけではないが、将来的に必要になったら依頼したい」という潜在層も多く存在します。
こうした「そのうち客」との継続的な接点を保つ仕組みが、中長期的な受任機会を生み出します。
LINEでの情報提供
相続や生前対策に関心を持つ方に対し、LINE公式アカウントを通じて定期的に有益な情報を配信します。法改正の動向、季節ごとの対策ポイント、よくある質問への回答など、タイムリーな情報提供を続けることで、関係性を維持します。
実際に相談が必要になったとき、「そういえばLINEで情報をくれていた事務所があったな」と思い出してもらえることが目的です。
Samikaが提供する「サズカルステップ」のようなシステムを活用すれば、こうした継続的なコミュニケーションを効率的に実施できます。

第4層:指名検索を増やす取り組み
最終的に目指すべきは、「●●事務所」という固有名詞で検索してもらえる状態を作ることです。
ユーザーが複数の事務所を比較検討する際、真っ先にあなたの事務所名で検索してくれるようになれば、AI検索の影響を大きく回避できます。
そのためには:
・口コミ・レビューの蓄積:Googleビジネスプロフィールでの評価を高める ・SNSでの発信:日常的な情報発信を通じて、事務所の人柄や専門性を伝える ・地域活動への参加:セミナー講師、地域イベントへの協力など、リアルな接点を増やす ・既存顧客からの紹介促進:満足度の高いサービス提供と、紹介しやすい仕組みづくり
こうした活動を通じて、事務所のブランド力を高めていくことが、長期的には最も強固な集客基盤になります。
広告への過度な依存にも注意が必要
一点、留意しておきたいのは、リスティング広告は有効な手段ではあるものの、士業×相続分野では競争が激しく、クリック単価が高騰しているという現実です。
主要なキーワードでは、1クリックあたり数千円以上になることも珍しくありません。
予算が潤沢でない中小規模の事務所にとって、広告のみに頼る戦略はコスト面でのリスクが大きくなります。
だからこそ、広告・SEO・SNS・LINE・地域活動といった複数の導線を組み合わせた設計が現実的であり、持続可能な集客につながるのです。
株式会社Samikaでは、相続・生前対策分野の士業事務所に特化したWebマーケティング支援を行っています。
顧客管理システムやLINE運用支援「サズカルステップ」をはじめ、こうした新しい時代の集客戦略の構築をサポートしています。
自社の集客に課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。

