介護福祉関連、特にケアマネジャーや介護スタッフとの関係構築には、一般的な営業とは異なる配慮が必要です。
「営業臭」を絶対に出さない
ケアマネジャーや介護スタッフは、日々利用者の最善の利益を考えて仕事をしています。
そのため、金銭的な目的を持って利用者に近づこうとしていると感じられた瞬間に、一気に信頼を失い、拒絶されます。
❌NG例:「うちに相談してくれたら紹介料をお支払いします」
❌NG例:初対面で営業資料を大量に渡す
⭕OK例:「入居者様やご家族の不安を少しでも減らせるお手伝いができれば」という姿勢
信頼関係構築には時間がかかることを理解する
介護業界は「人」と「信頼」が何よりも重要な世界です。
一度の訪問で成果を求めるのではなく、半年から1年以上かけて関係を構築する覚悟が必要です。
介護現場の多忙さを理解し、配慮する
ケアマネジャーや介護スタッフは常に多忙です。
長時間の営業トークや、業務時間中の突然の訪問は嫌がられます。事前アポイントの徹底と短時間で要点を伝える工夫が必須です。
「Give」の精神で関わる
最初から案件獲得を目指すのではなく、まずは有益な情報提供や無償での勉強会開催など、「与える」ことから始めることが重要です。
利用者・入居者の利益を最優先する姿勢を示す
常に「入居者様・利用者様のために」という視点で提案を行うことが、介護現場との信頼構築の基本です。
士業としての専門性を活かし、本当に必要な方に、必要なサポートを提供する姿勢が伝わることが何より大切です。

継続的に関係構築を行うための具体的な取り組み
介護福祉関連施設との関係構築は、一度きりのアプローチではなく、継続的な接点を持ち続けることが成功の鍵です。
以下の取り組みを組み合わせて実践しましょう。
少人数制の勉強会を定期開催する
ケアマネジャーや介護スタッフ向けに、3〜10名程度の少人数制勉強会を定期的に開催します。
勉強会のテーマ例:
- 「入居者様からよくある相続・遺言の相談にどう対応するか」
- 「認知症が進行する前に準備しておくべき法的手続き」
- 「家族信託とは?成年後見との違いを分かりやすく解説」
- 「身元保証・死後事務委任契約の基礎知識」
ポイント:
- 月1回または隔月など、定期開催にすることで接点を維持する
- 参加者が気軽に質問できる雰囲気を作る
- 営業色を一切出さず、純粋に「学びの場」として提供する
- 実際の相談事例(匿名化)を交えて実践的な内容にする
メールマガジン・ニュースレターを定期配信する
月1回程度、介護現場で役立つ法律情報や相談解決事例をまとめたメールマガジンやニュースレターを配信します。
掲載内容例:
- 今月の相談事例(匿名化):「認知症の母の不動産を売却したいが、どうすれば?」
- 法改正情報:「相続登記義務化の最新情報」
- ワンポイント法律知識:「遺言書の種類と選び方」
- セミナー開催のお知らせ
ポイント:
- A4で1〜2枚程度、読みやすい分量にする
- 専門用語をできるだけ避け、介護スタッフが理解しやすい表現を心がける
- 具体的な事例を盛り込むことで、「自分の担当する利用者にも当てはまる」と感じてもらう
- 紙媒体とメール両方で配信し、施設内で回覧してもらえるようにする
「いつでも相談できる窓口」であることを伝える
勉強会やニュースレターを通じて、「困ったときはいつでも気軽にご相談ください」というメッセージを一貫して伝え続けます。
具体的な方法:
- 専用の相談窓口(電話・メール・LINE)を用意する
- 「まずは相談だけでも大歓迎です」という姿勢を明確にする
- 初回相談は無料にして、ハードルを下げる
施設訪問を定期的に行う
月1回程度、施設やケアマネ事業所を訪問し、「何かお困りごとはありませんか?」と顔を出すことで、存在を忘れられないようにします。
ポイント:
- 長居せず、10〜15分程度で切り上げる
- 手土産として、ニュースレターの最新号や法律情報をまとめた資料を持参する
- 無理に案件を取りに行かず、「困ったときに思い出してもらえる存在」になることを目指す
紹介された案件には120%の対応をする
一度でも相談や案件を紹介してもらえたら、その対応が次の信頼に直結します。
迅速で丁寧な対応を心がけ、結果を必ずフィードバックすることで、「この先生なら安心して紹介できる」という評価を獲得します。

まとめ
介護福祉関連施設は、相続・生前対策・財産管理の分野において、非常に大きな可能性を秘めたチャネルです。
しかし、一般的な営業手法は通用せず、時間をかけた信頼関係の構築が不可欠です。
成功の3つのポイント:
- 営業臭を出さず、「入居者・利用者の利益最優先」の姿勢を貫く
- 勉強会やニュースレターを通じて、継続的に接点を持ち続ける
- 一度相談を受けたら、120%の対応で信頼を勝ち取る
最初の半年から1年は、ほとんど案件が発生しないかもしれません。
しかし、粘り強く取り組むことで、やがて「あの先生に相談すれば大丈夫」という評判が広がり、営業しなくても相談が舞い込む状態を作ることができます。
介護福祉関連への営業は、短期的な成果を求めるのではなく、中長期的な関係構築による安定的な集客基盤の確立を目指す戦略です。
ぜひ、今日から一歩を踏み出してみてください。
執筆者のご案内
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓
東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。
現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。
「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。

