介護福祉関連施設は「ブルーオーシャン」
相続や生前対策、財産管理分野で集客を強化したいと考えている司法書士・行政書士・税理士事務所にとって、見落とされがちながら非常に有望なチャネルが「介護福祉関連施設」です。
有料老人ホーム、社会福祉協議会、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)などの介護福祉関連施設は、まさに生前対策や財産管理のニーズが集中する場所でありながら、多くの士業事務所がアプローチできていない「ブルーオーシャン」と言えます。
本コラムでは、介護福祉関連施設が抱える課題と、士業事務所がどのようにサポートできるのか、そして信頼関係を構築するための具体的な営業戦略について解説します。

介護福祉関連施設が抱える6つの課題
介護施設やケアマネジャーは、日々の介護業務だけでなく、入居者や利用者の財産管理や法的な問題に関わる場面が少なくありません。
しかし、これらは本来の業務範囲を超えるため、以下のような課題を抱えています。
1. 入居見込顧客の身元保証問題
身寄りがない方や親族と疎遠な方が施設入居を希望する際、保証人を用意できないケースが増加しています。
施設側としては、緊急時の連絡先や金銭的保証が確保できないため、入居を断らざるを得ない状況が発生しています。
2. 入居者の財産管理リスク
認知症高齢者や身寄りのない入居者の財産管理は、施設にとって大きなリスクです。
不適切な管理によるトラブルや、家族からのクレーム、さらには法的責任を問われる可能性もあります。
3. 入居者の生前対策(相続対策)の不備
多くの入居者が遺言書作成や相続対策を行わないまま入居しており、万が一の際に家族間でトラブルが発生するケースがあります。
施設としても、こうした問題に巻き込まれることは避けたいところです。
4. 介護スタッフの業務負担増加
入居者やその家族から財産管理や相続に関する相談を受けることがありますが、介護スタッフはこれらの専門知識を持ち合わせていません。
本来の介護業務に集中できず、精神的な負担も大きくなっています。
5. 身元保証人の高齢化リスク
入居時に身元保証人を立てていても、その保証人自身が高齢化や認知症発症により、契約維持が困難になるケースが増加しています。
施設としては、保証人の再確認や代替手段の検討が必要になり、大きな負担となっています。
6. 入居者数増加の課題
多くの施設が経営上、入居者数の増加を課題としています。
しかし、単なる価格競争ではなく、付加価値を提供することで選ばれる施設になることが求められています。
士業事務所によるサポートで実現する理想的な状態
これらの課題に対して、士業事務所が適切にサポートすることで、介護施設は以下のような理想的な状態を実現できます。
施設長・経営者にとって
- 相続対策・財産管理のサポート体制が充実し、施設の付加価値が高まることで、「安心してシニアライフを送れる施設」として評価が向上します
- 身寄りのない方などの金銭保証・身元保証が整備され、施設側の金銭リスクを回避できます
- 入居者数増加につながる差別化要因となります
介護スタッフにとって
- 専門外である財産管理・相続対策などの相談を専門家に一任でき、本来の介護業務に集中できます
- 入居者の財産管理が適切に行われることで、金銭的なトラブルやリスクから解放されます
- 法的な責任を負うリスクが軽減されます
施設利用者・家族にとって
- 施設入居者の入居保証(身元保証)が整備され、緊急時の連絡先確保や死後対応に問題がありません
- ライフステージに応じた最適な相続・生前対策が実施され、各種死後手続きを専門家に任せられます
- 家族の精神的・実務的負担が大幅に軽減されます

士業事務所が提供できる具体的なサポート
介護福祉関連施設に対して、士業事務所は以下のような具体的なサポートを提供できます。
入居者・家族向けサポート
1.身元保証サポート
身寄りがない方でも安心して施設入居が可能になり、緊急時の対応や死後事務を確実に行います。
2.家族信託の設計・実行
不動産や預貯金などの財産管理・運用を信頼できる家族に任せ、不正やトラブルを未然に防止します。
3.遺言書作成サポート
元気なうちに財産分配を明確にし、相続人間のトラブルを防止します。公正証書遺言の作成も含めた包括的なサポートが可能です。
4.死後事務委任契約
葬儀、遺品整理、各種解約手続きなどを専門家に一任でき、相続人の負担を大幅に軽減します。
5.成年後見制度の利用
認知症発症などによる判断能力低下時の財産管理と身上監護を法的に支援します。
6.財産管理・不動産売却サポート
施設入居に伴う自宅の処分方法の検討や、保険の見直し、資産の最適化を支援します。
7.相続・生前対策に関する個別無料相談
入居者や家族が気軽に相談できる窓口を提供します。
8.施設内セミナー・勉強会の開催
遺言書作成や家族信託など、テーマ別の勉強会を定期的に開催します。
入居検討見込顧客向けサポート
1.身寄りのない入居見込者への身元保証・死後事務委任
入居のハードルを下げ、施設の受け入れ幅を広げます。
2.入居前セミナーの開催
入居を検討している方向けに、生前対策の重要性を啓発するセミナーを実施します。
施設スタッフ向けサポート
1.ケアマネ・介護スタッフ向け勉強会
入居者の生前対策に関する基礎知識を学べる機会を提供し、適切な専門家への橋渡しができるようサポートします。
2.相談事例の共有
実際の相談事例を定期的に共有することで、スタッフが入居者・家族からの相談に適切に対応できるようになります。
介護福祉関連施設は、相続・生前対策・財産管理のニーズが集中する非常に有望なチャネルです。
しかし、施設側が抱える課題は多岐にわたり、それらに対して士業事務所がどのような具体的サポートを提供できるのかを理解することが、関係構築の第一歩となります。
本コラムでは、介護福祉関連施設が直面する6つの課題と、士業事務所が提供できる具体的なサポート内容、そして実現できる理想的な状態について解説しました。
次回のコラムでは、介護福祉関連への営業で絶対に外してはならない重要なポイントと、継続的に関係構築を行うための具体的な取り組み、そして実践的な営業ステップについて詳しく解説します。
執筆者のご案内
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓
東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。
現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。
「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。

