士業事務所における顧客管理(CRM)データ活用、BIシステム導入の必要性

2025.07.03 17:54

〜相続・生前対策分野で勝ち残るための経営戦略〜

なぜ今、データ活用が必要なのか


現在、多くの企業で顧客管理(CRM)の強化、データ活用の必要性が叫ばれ、取り組みを進める企業も増えています。

しかし、士業事務所においては、ほとんどの事務所が顧客管理(CRM)が整備されておらず、顧客データ、KPI(経営指標)データを正しく扱えていないのが現実です。


今期の売上把握はもちろん、先行指標となる反響数や面談数の推移、昨年同月対比での比較、反響のチャネル分析、チャネルごとの反響事案の相談分類などを把握した上で、部門ごとの現状把握、課題発見、取り組みの優先順位付けがしっかりとできている事務所は、ほとんどないと言っていいでしょう。


限られた資本の最適化が経営の核心


なぜこのような顧客管理(CRM)システム活用、データ活用が必要なのでしょうか?

それは、限られた資本(時間、資金、人材)をどこに投資するかを考えることが経営の本質だからです。



特に市場内の競争が激化し、人材獲得が困難なこの時代に、成果を出し続けるためには、この資本の最適化が不可欠です。


市場が大きく成長していて、効率的なマーケティングを行わなくても成果につながるような分野であれば、データ活用の必要性は低いかもしれません。

しかし、先生方が今取り組んでいる相続・生前対策分野は競争が激しくなってきている市場なので、なおさら重要になってきます。


現状把握のための重要な質問


例えば、先生方は事務所の相続分野の現状の成果、KPIが正しく把握できていますか?


以下の質問に答えてみてください。

      • 今期の相続部門売上目標はいくらですか?
      • ✓ その売上目標を達成するために、各KPIの数値目標はいくらですか?(受任単価、受任数、面談件数、反響数)
      • 各KPIの現状の数値はどの程度ですか?
      • 目標KPIと現状のKPIとの乖離がある場合、優先して取り組むべき内容は何ですか?
      • ✓ 相続分野の全反響に占める上位3つの集客動線は何ですか?
      • 昨年度との比較でその上位3つの集客動線の中で、シェアが上がった・下がった要因は何ですか?
      • ✓ 相続業務に関わる事務所内スタッフの中で、面談誘導率が最も高いスタッフは誰ですか?
      • ✓ 相続業務に関わる事務所内スタッフの中で、受任率・受任単価が最も高いスタッフは誰ですか?
      • ✓ Webマーケティングを行っている事務所の場合、ウェブサイト経由の案件における受任単価・受任率はどれくらいですか?
      • ✓ Web経由の反響のCPA(1件あたり反響獲得コスト)、CPO(1件あたり受任獲得コスト)はどれくらいですか? また売上に占める反響コストの割合(販促費率)はどれくらいですか?



データ活用による効率的な経営の実現


上記の質問にしっかりと答えられる、または確認できるシステムがあるというのであれば、非常に効率的な事務所運営ができていると思います。


それができない事務所であれば、「なんとなく経営」を続けてしまっている状態で、効率が良い事務所経営が難しく、反響や売上作りにかかるコストを無駄にかけてしまっていたり、貴重な経営者やスタッフの時間を無駄なことに投資させ負担をかけてしまっている状態が続いていると言えます。


データ活用事務所の具体的な成果例


上記の質問に対して答えられる、または確認できるシステムがある事務所が、どのような効率的な経営ができているか、以下の実例をご覧ください。



【事例】データ活用による戦略的経営の実現

「月次反響数は約54件、面談誘導率は68%、受任率は64%、平均受任単価は30.6万円」
という現状データが常時把握できている当事務所では、データに基づいた戦略的な経営判断を行っています。


「今期の売上目標は、昨年度対比120%成長である」
この強気な目標設定ができる理由は、データ分析により反響数の向上と、受任単価の向上に大きな改善の余地があると特定できたからです。


データから見えた課題と対策


【反響チャネル分析による戦略立案】

毎月のBIレポートから、紹介経由が全反響の55.4%を占める最大チャネルであることが判明。
さらに紹介元を詳細分析すると、金融機関経由の反響が54件(前年対比-30.8%)、葬儀社経由が44件(前年対比+37.5%)という具体的な数値が把握できています。


この分析結果を受けて、葬儀社チャネルへの営業強化を最優先施策に決定。
一方で、金融機関チャネルは競合参入により減少傾向にあるため、新規開拓よりも既存関係の深化に方針転換しました。


【HP経由の課題と改善施策】

HP経由の反響は月平均17件、面談誘導率69%、受任率56%というデータが毎月レポートで確認できます。
広告費は月約29万円、CPR(反響獲得単価)は21,894円、CPO(受任獲得単価)は56,725円、販促費率24%という具体的な投資効率も把握しています。


6-7月のデータを見ると反響数が急減(月2件)しており、すぐにリスティング広告の見直しとLP改善を実施。
結果を翌月のレポートで検証する体制を構築しています。


【スタッフパフォーマンス分析】

電話対応スタッフ別の面談誘導率を分析した結果、最高88%から最低31%まで大きな開きがあることが判明。

具体的には:

    • Aスタッフ:85件対応、面談誘導率88%
    • Bスタッフ:50件対応、面談誘導率58%
    • Cスタッフ:40件対応、面談誘導率31%


この分析を受けて、高パフォーマンススタッフへの集約と、低パフォーマンススタッフへの研修実施を決定。
特にコストをかけているWeb経由の反響は、面談誘導率の高いスタッフに優先配分するよう運用を変更しました。


【面談対応・受任分析】

面談担当者別の受任データ分析では:


スタッフA担当:115面談、57受任、受任率50%、平均単価30万円

スタッフB担当:担当件数は少ないが受任率66%、平均単価は事務所平均以下


分析の結果、受任率は高いが単価が低いスタッフは「相続登記のみ」の提案に留まり、遺産整理業務や家族信託の提案ができていないことが判明。
スタッフBを中心に、遺産整理や不動産売却ニーズの把握、二次相続提案の提案フローの再確認などを重点的に行いました。


【商品別収益分析】

受任分野別の詳細データから:

    • 遺産整理:15件受任、平均単価65.8万円、売上貢献度37.1%
    • 相続登記:47件受任、平均単価14.5万円、売上貢献度18.1%
    • 家族信託:6件受任、平均単価48.9万円、売上貢献度8.3%


この分析により、遺産整理の提案強化が最も効率的な売上向上策であることが定量的に証明され、スタッフ研修の内容と優先順位を決定しました。


データ活用で実現する競争優位


これらは、顧客管理(CRM)システム活用でKPI・KGIのタイムリーな把握、BIツールの活用ができている事務所の、課題把握、課題解消のための取り組み決定、取り組みの優先順位付けのプロセスの一例です。


こういった形でできると、限られた資本の中でも良い成果を出し続けることができるということはイメージしていただけると思います。


逆に、これができない事務所が、今後ますます競争が厳しくなり、人材獲得が難しくなる業界の中で成果を出し続けることは、ますます厳しい状態になってくるはずです。


株式会社Samikaの「相続・生前対策特化BIツール」


株式会社Samikaは、士業事務所の中で相続や生前対策事業に注力する事務所のマーケティング・業績アップ支援を行っています。


その中で全支援先に提供しているのが、相続・生前対策事業に特化した顧客管理(CRM)システムの導入とBIツール導入です。


このBIツールでは、反響、受任など顧客情報をしっかり入れてもらうと、以下のようなリアルタイムでの経営数値の見える化が実現できます

月間サマリーダッシュボード

  • 反響数、面談数、受任数の月次推移
    • 面談誘導率、受任率、平均単価の変化
    • 前年同月対比での成長率分析


    年度サマリーダッシュボード

    • 反響数、面談数、受任数、受任単価など重要KPI
    • 前年度対比での成長率分析

    チャネル別詳細分析

  • 紹介、HP、リピート等の反響ルート別実績
    • 各チャネルの受任率、平均単価
    • ROI(投資対効果)の定量評価


    スタッフパフォーマンス分析

  • 電話対応者別の面談誘導率
    • 面談担当者別の受任率・平均単価
    • 個人別の売上貢献度

    商品・サービス別収益分析

  • 相続登記、遺産整理、家族信託等の受任件数
    • サービス別の平均単価と収益貢献度
    • クロスセル・アップセルの機会発見

    Webマーケティング効果測定

  • GA4連携による流入分析
    • 広告費、CPR、CPO等のコスト効率
    • コンバージョン経路の詳細追跡

    実際の支援先事務所では、これらのデータを活用することで平均30%以上の売上向上を実現し、「なんとなく経営」から「データに基づく戦略的経営」への転換を成功させています。


    士業事務所で相続や生前対策分野のマーケティングに注力する事務所で、データ活用の必要性を感じてもらえた事務所経営者様は、ぜひ株式会社Samikaにご相談ください。

    限られた資本を最適化し、競争激化する市場で勝ち残るためのデータ活用・BIシステム導入について、具体的なご提案をさせていただきます。


    執筆者のご紹介

    株式会社 Samika 
    代表取締役 川崎 啓

    東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

    現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

    「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。