相続WEBマーケティングの現状と課題
相続案件を集客するためのWebマーケティング環境は、この2~3年で劇的に変化しました。
従来は司法書士、行政書士、税理士、弁護士といった士業事務所同士の競争でしたが、現在は様相が一変しています。
相続ポータルサイト、不動産会社、金融機関など、士業事務所より資金力と規模を持つ競合が本格的にWebマーケティングに参入しているのです。
これらの企業は潤沢な広告予算を武器に、SEOでもリスティング広告でも上位を独占し始めています。
その結果、従来から相続分野で実績を積んできた士業事務所でも、Web反響が著しく下がっている状況が全国で起きています。
特に相続税分野では競争が最も激化しており、問い合わせ獲得コストが数年前の2~3倍に高騰している事務所も珍しくありません。
業界でも有名な相続税申告特化の税理士法人でさえリスティング広告から撤退し、コンテンツマーケティングへの転換を余儀なくされているほどです。
これは、会計顧問業務などで安定収益を持つ大手税理士法人が、相続税申告獲得のためのWebマーケティングに本格的に資金投入していることが主要因となっています。
司法書士や行政書士など、独占領域が少なく受任単価が相対的に低い業種では、より深刻な状況に直面しています。
顧客獲得コストの急激な上昇により、集客・受任に成功しても、広告費や人件費を差し引くと利益が残らない、いわゆる「集客貧乏」状態に陥る事務所が急増しているのです。
特に都心部では司法書士・行政書士のWeb集客シェアが大幅に下落し、多くの事務所が葬儀社開拓や地域密着型の営業など、Webマーケティング以外の手法による相続発生時点での顧客獲得に軸足を移しています。
このような状況下で、明確な戦略なしにWebマーケティングに取り組む事務所は、広告費を垂れ流すだけの結果に終わってしまう危険性が高く、十分な注意が必要です。

成功の鍵はWEBマーケティングの正しいKPI設定
株式会社Samikaがコンサルティングサポートしている事務所でのWEBマーケティングにおいて最も重視しているのが、WebマーケティングにおけるKPI設定です。
自社運用はもちろん、外注先に依頼している事務所でも、KPIの設定・管理を怠り、なんとなくの運営になってしまっているケースが散見されます。
相続分野におけるWebマーケティングの適切なKPI設定例をご紹介します。
司法書士事務所の場合
- - CV獲得コスト:20,000円
- - クリック率:7~10%
- - CPR(反響獲得コスト):25,000円
- - CPO(受任獲得コスト):50,000円
- - 受任単価:250,000円
- - 売上に占める販促費の割合:20%程度
税理士事務所の場合:
- - CV獲得コスト:50,000円
- - クリック率:7~10%
- - CPR:70,000円
- - CPO:100,000円
- - 受任単価:700,000円
- - 売上に占める販促費の割合:15%程度
リスティング広告をWEB運用代行会社に依頼する場合の注意点
外注を検討する際は、依頼候補先が以下の条件を満たしているかを必ず確認してください。
1. 士業事務所のリスティング広告運用実績があるか
単にWebマーケティング会社としての実績ではなく、士業事務所特有の法的制約や業界慣習を理解した運用経験があるかが重要です。
2. 相続分野での運用経験があるか
相続は士業の中でも特殊な分野です。
顧客の心理状況、検索行動パターン、競合状況を理解した運用ができるかを確認しましょう。
3. 最終目標を「コンバージョン獲得」ではなく「売上獲得」として設定しているか
相続のWEBマーケティングにおいて「問い合わせ数・反響数」を増やすことは実はそこまで難しいことではありません。
いかに問い合わせが増えたとしても、面談や受任に繋がる問い合わせを獲得できないと、「反響がない」ことと同じことです。
問い合わせ数だけでなく、受任率や受任単価まで含めた売上ベースでの成果を重視する会社を選ぶべきです。
さらに重要なのは、具体的な運用方針について以下の質問をすることです。
- - どのようなキーワードで広告出稿するつもりか
- - 目標KPIはそれぞれどの程度で、Webマーケティングにおける最終目的は何か
- - 競合分析はどのように行い、どんな差別化戦略を考えているか
これらの答えが曖昧だった場合、その会社に広告運用を依頼しても期待する成果は得られず、広告費ばかりがかかる結果になる可能性が極めて高いといえます。
リスティング運用代行会社の多くは広告運用額のパーセンテージで利益を得るため、事務所の収益性よりも広告費の拡大を優先する傾向があります。
このような会社の思惑に巻き込まれないよう、十分な注意が必要です。
「狭属性一番化」でニッチ領域でトップを目指す
相続Webマーケティング初心者や経験の浅い運用代行会社がよく犯す大きな間違いが、「相続」という広義のキーワードでの広告出稿です。
各士業には明確な専門領域があります。
- - 税理士:相続税申告
- - 弁護士:遺産分割、遺留分、相続紛争
- - 司法書士:相続登記、遺産整理
- - 行政書士:遺産分割協議書、遺産整理
しかし、「相続 相談」のような広義のキーワードで集客しようとすると、競争相手が士業全体、さらには不動産会社や金融機関まで広がってしまい、貴重な広告予算を無駄にする結果となります。
これから相続分野のWebマーケティングに注力する士業事務所には、以下のアプローチを強く推奨します。
事務所の独占業務に特化したサイトで地域一番を目指すことです。
司法書士なら相続登記、税理士なら相続税申告といった具合に、競争相手を同業だけに絞り、リスティング広告のキーワードも絞って運用することで、効率的なWebマーケティングが実現できます。
この専門特化戦略が有効な理由は明確です。
競合を同業者のみに限定することで、リスティング広告のクリック単価を抑制でき、より効率的な集客が可能になります。
また、専門性の高いコンテンツを継続的に発信することで、SEOでも優位性を確保しやすくなるのです。
分野選択においては、生前対策よりも相続発生後の手続き業務に絞ることを強くお勧めします。
生前対策の見込み客は「いつか必要になるかもしれない」という潜在的ニーズの段階ですが、
相続発生後の手続きは「今すぐ解決しなければならない」顕在ニーズです。
顧客の緊急度が高いため、見込み客の相談・依頼確度が格段に高く、結果として売上につながりやすいという特徴があります。
中長期的な視点で数年かけて地域一番クラスの集客力を誇るWebサイトを構築したい場合は、生前対策分野も含めたコンテンツでSEO対策中心のWebマーケティングも有効な選択肢です。
しかし、中小規模の事務所では、投下した販促費以上の反響・売上がないとWebマーケティングの継続が困難になるため、まずは確実に成果の出やすい「狭い属性での専門特化」サイトから始めることが現実的な選択となります。
なお、司法書士・行政書士の先生方で単価の高い「遺産整理案件」の集客を最初から狙う場合は、特に注意が必要です。
「遺産整理」という用語は一般の方の認知度が低く、直接的な検索ボリュームが少ないのが現状です。
さらに、遺産整理のニーズを持つ潜在顧客は「相続 預貯金 解約」「相続 遺産分割 進まない」「相続 株 分配」など、様々なキーワードで検索する傾向があります。
このため、効果的な集客を行うには多数のロングテールキーワードでの出稿が必要となり、結果として相続税申告や相続登記と比較して集客コストが高騰しがちです。
遺産整理案件は受任後の相続登記や遺産分割協議書作成の過程で自然にアップセルする方が、費用対効果の観点からは有効といえるでしょう。
WEBマーケティングが初めての事務所での成功事例
株式会社Samikaがコンサルティングサポートを行っている司法書士事務所での成功事例をご紹介します。
- - 相続登記専門のランディングページを約1ヶ月で制作
- - 相続登記関連キーワードに限定し、月額30万円の予算で広告出稿
- - 実績:クリック率15%、CV単価13,000円、反響獲得コスト20,000円、受任獲得コスト35,000円
- - 受任単価:250,000円(相続登記単体に加え、その他相続財産の名義変更・分配作業等も遺産整理として提案し、全体の20%程度が遺産整理業務として受任)
- - 運用開始から上記成果達成まで約4ヶ月
競争が激化する相続Webマーケティング市場において、士業事務所が成功するためには、明確なKPI設定と専門特化戦略が不可欠です。
従来のような「とりあえずWebサイトを作って広告を出す」という手法では、もはや成果を上げることは困難な時代になっています。
成功のポイントは以下の3つに集約されます。
1. 明確なKPI設定と継続的な改善
数値に基づいた運用により、感覚に頼らない科学的なマーケティングを実現する
2. 専門特化による差別化
広義の「相続」ではなく、自事務所の独占業務に焦点を当てた効率的なマーケティング
3. 適切なパートナー選択
外注する場合は、士業・相続分野での実績と売上志向を持つ会社を慎重に選定する
これらの要素を組み合わせることで、限られた予算でも競合優位性を確保し、持続可能な集客システムを構築することが可能になります。
株式会社Samikaは、士業事務所の相続分野Webマーケティングに強みと実績を持つ、士業専門のコンサルティング会社です。
単なる広告運用代行ではなく、事務所の収益性向上を最終目標に据えた戦略的サポートを提供しています。
現在の市場環境を踏まえた現実的な戦略立案から、具体的な運用サポート、継続的な改善提案まで、貴事務所の状況に応じた包括的なソリューションをご提案いたします。
競争激化時代を勝ち抜く相続Webマーケティング戦略について、まずは現状分析から始めてみませんか。
ぜひ一度、株式会社Samikaまでお気軽にご相談ください。
執筆者のご紹介
株式会社 Samika
代表取締役 川崎 啓
東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。
現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。
「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。