司法書士にとって税理士連携は案件獲得の最重要戦略
司法書士事務所にとって、相続案件の安定的な獲得は事業成長の鍵となります。ホームページやセミナーなどダイレクトマーケティングの取り組みも大切ですが、他業種との連携で相続案件の紹介を獲得するといった「紹介チャネル開拓」のアプローチも同じくらい大切です。
相続分野での連携チャネル先として候補となる業種は沢山ありますが、その中でも注目すべきなのが、税理士事務所との戦略的な連携です。
相続税申告を扱う税理士事務所は、必然的に相続手続き全般のニーズを持つ顧客と接点を持っています。
「相続登記」についての紹介を受けているという事務所は多いと思いますが、それだけでなく
・相続税申告業務に必要な相続調査(戸籍収集~遺産分割協議書作成~法定相続情報証明書取得など)
・相続財産の名義変更、分配作業(遺産整理業務)
などを紹介してもらえている連携までできている事務所はそう多くないはずです。
この連携を成功させることで、司法書士事務所は安定した案件紹介を獲得できることはもちろん、法務・税務面でお互いの得意不得意な部分を補い合い、顧客に最適な相続提案ができるようになるなど、非常に大きな可能性を秘めています。

税理士事務所に、エンド顧客の真のニーズを理解してもらう
相続税申告業務に取り組む税理士事務所の中にも、申告以外の名義変更などの手続きはもちろん、戸籍収集についても顧客に対応してもらっているという事務所は非常に多く、その点について特に課題感を持っていないという税理士先生方も少なくありません。
しかし、相続税申告を依頼する顧客の多くは、相続税申告以外にも様々なニーズを抱えています。
「相続税以外の名義変更も相談したい、対応してもらいたい」
「忙しいし大変だから、戸籍収集から全て任せたい」
「相続不動産の処分や二次相続なども提案してもらいたい」
これらのニーズに対して適切に対応できるかどうかが、顧客の満足度を大きく左右します。
特に顧問先の相続案件では、これらのニーズに応えられないことで、他の税理士事務所との接点を作るきっかけを与えてしまい、長年築いてきた信頼関係が損なわれるリスクもあります。
営業成功の鍵:税理士事務所の本音と課題を理解する
司法書士が税理士事務所への営業を成功させるためには、まずその税理士先生の本音と課題を深く理解することが不可欠です。
税理士事務所の多くは「相続の相談が増えているので今後は資産税にも注力したい」と考えている一方で、
「相続業務だけに集中できないので優先順位が上がりにくい」
「確定申告など繁忙期にはできる限り相続案件は受けたくない」
という矛盾を抱えています。
特に重要なのは、
「相続財産の名義変更の相談・依頼にはできる限り対応したくない」
「本音では、できれば資産税業務よりも顧問業務に集中したい」
「相続税申告書作成だけに対応し、その他手続は外注したい」
という声です。
この本音を理解した上で、司法書士側から適切な解決策を提案することが営業成功の第一歩となります。

司法書士が提案すべき「税理士の理想を実現する」連携モデル
税理士事務所の本音を踏まえ、司法書士が提案すべき連携モデルは以下の通りです。
税理士事務所が実現したい理想的な相続手続き対応
- 相続税申告書作成業務に集中することができる
- 繁忙期は相談・受任を止めても顧問先の信頼が下がらない
- 相続名義変更から二次相続提案まで全てサポートができる
司法書士が提案する具体的なサポート内容
- 相続調査(相続人確定、財産調査)作業を丸ごと引き受け
- 相続財産の名義変更、財産分配を完全サポート
- 戸籍収集から遺産分割協議書作成まで一括対応
- 法定相続情報証明書取得も含めた総合的なサービス提供
この提案により、税理士は本来の専門業務である税務申告に専念でき、顧客満足度向上も同時に実現できることを強調します。
営業時に必ず解消すべき税理士の懸念点
司法書士が税理士への営業を成功させるためには、以下の懸念点を事前に解消することが重要です。
報酬に関する懸念
「相続税申告報酬に加え、遺産整理や名義変更などの報酬が高いと、相続税申告の受任可否にも影響が出るのではないか」
→ 戸籍など必要書類の収集代行サポートや、相続財産の名義変更・分配などといった遺産整理サポートの提案については「税理士事務所における相続税申告の契約」が完了した後で実行することで、「相続税申告の失注リスク」を無くすことができることを伝える。
また、司法書士側から適正かつ透明性の高い報酬体系を明示し、顧客予算に応じた柔軟な対応が可能であることを伝える。
業務負担に関する懸念
「相続税申告業務以外の名義変更に関する話は、出来るだけ関与したくない。受任後の業務連絡も直接司法書士側からエンド顧客にとってほしい」
→ 税理士の業務負担を最小限に抑える体制を明確に説明する。税理士はトスアップの役割に徹し、その後の進行管理や顧客対応はすべて司法書士が担当することを約束する。定期的な進捗報告のみで、日常的な連絡は司法書士が直接顧客と行う体制を提案する。

連携による相互メリットの最大化
この連携により、税理士事務所は本来の専門業務に集中しながら顧客満足度を向上させ、司法書士事務所は安定した案件紹介を受けることができます。
特に重要なのは、税理士事務所の業務負担をほとんど増やすことなく、エンド顧客の満足度向上と顧問切れの防止というメリットを享受できる点です。司法書士が積極的に相続手続実務はもちろん営業活動を代行し、相続手続きの必要性をエンド顧客に説明することで、税理士は本来業務に専念できます。
相続手続きにおける司法書士と税理士の連携は、単なる業務分担にとどまらず、それぞれの専門性を活かした付加価値の高いサービス提供を実現します。税理士は税務申告に専念し、司法書士は相続手続き全般をサポートすることで、顧客にとってもより満足度の高いサービスを提供できます。
この連携モデルの成功の鍵は、お互いの業務範囲と責任を明確にし、顧客への価値提供を最優先に考えた協力体制を構築することです。相続という人生の重要な場面で、専門家同士が連携してサポートすることで、顧客の信頼と満足を獲得し、長期的な関係性を築くことができるでしょう。