「相続手続業務は生産性が低い?!」は本当?
相続税申告を主業務とする税理士法人が、相続手続きや財産の名義変更などの遺産承継業務に取り組まないケースは少なくありません。
その背景には、「面倒である」「収益性が低い」「人材リソースの余裕がない」といった理由があります。
実際に、相続税申告の依頼者から名義変更や戸籍収集などの相談があっても、それらの作業は依頼主自身が対応すべきとして断るケースも多く見られます。

このような状況は、税理士事務所にとって長期的な視点で見ると、ビジネスチャンスの喪失につながっている可能性があります。
確かに、相続税申告業務に特化することで、効率性と生産性を高められるメリットはあります。専門分野に集中することで、業務品質の向上やスピードアップが図れるでしょう。
しかし、遺産承継業務に取り組まないことで、さまざまな機会損失が生じている可能性も看過できません。
相続は税務だけでなく、その前後のプロセスを含めた総合的なサービスを求める顧客ニーズが高まっているのです。
遺産承継業務に取り組む主なメリット
営業努力なしで受任可能:
既存顧客との信頼関係をベースに、追加サービスとして提供できるため、受任率も高くなります。
業務処理体制の構築しやすさ:
名義変更などの業務は、相続税申告と比較して専門知識のハードルが低く、人材確保・育成がしやすいという特徴があります。
これにより、若手スタッフの教育の場としても活用でき、事務所全体の人材育成にもつながります。
市場規模の大きさ:
相続税の申告義務がある方は全国平均で約8%程度ですが、相続手続きや名義変更は相続が発生するすべてのケースで必要となるため、潜在顧客数が格段に多くなります。
発生頻度を考えると相続手続業務は、相続税申告の数倍という計算になり、その分多くの相続見込み客を獲得することができるなど、ビジネス拡大の可能性を大きく広げます。
顧客満足度の向上:
相続税申告だけでなく、名義変更まで一貫してサポートすることで、顧客からの信頼度と満足度が大幅に高まります。
ワンストップサービスの提供は、煩雑な相続手続きに悩む顧客にとって大きな安心材料となり、その後の長期的な関係構築にも寄与します。
二次相続対策につながる:
遺産承継業務を通じて、遺言書作成や家族信託、節税対策など、将来的な二次相続に向けた相談にも発展しやすくなります。
顧客の資産状況や家族関係を深く理解できるため、より的確なアドバイスが可能になり、継続的な顧問契約にもつながりやすくなります。
相互送客の仕組み構築:
相続手続きの顧客から相続税申告の相談を受けるという、新たな集客動線を作ることができます。
これにより、従来とは逆の流れでの案件獲得も期待でき、事業の安定性向上に貢献します。
外部連携先の拡大:
相続手続きに対応できることで、金融機関や葬儀社、不動産会社など、相続案件の紹介元との関係構築がスムーズになります。
これらの紹介元は、相続税申告は税理士、名義変更は司法書士と、顧客のニーズごとに振り先を変える対応を避けたいと考えています。
総合的なサービスを提供できる事務所を優先的に紹介先として選ぶ傾向があるため、紹介案件の増加も期待できます。
収益の安定化と多角化:
相続税申告業務は案件ごとに収益が発生する一方、遺産承継業務は比較的安定した収益源となり得ます。
業務の多角化により、季節変動や経済状況の影響を受けにくい、安定した経営基盤の構築につながります。
税理士が遺産承継業務に取り組むために必要なこと
遺産承継業務を本格的に展開するためには、以下の準備が必要です。
相続手続き・遺産承継業務のサポートメニュー作り:
顧客ニーズに合わせた複数のサービスプランを設計し、明確な料金体系を確立することが重要です。
基本プランと追加オプションを組み合わせることで、顧客の状況に応じた柔軟な対応が可能になります。
相続税申告とは異なる業務処理フローの構築:
相続手続きに特化した効率的な業務フローを設計し、チェックリストやマニュアルを整備することで、品質の均一化と業務効率の向上を図ります。
相続手続き業務専門のスタッフ配置と採用活動:
専任スタッフの配置により、専門性の向上と業務の効率化を実現します。
採用においては、税務知識よりもコミュニケーション能力や正確な事務処理能力を重視するなど、適切な人材像を明確にすることが大切です。
業務習得のための学習コンテンツ整備:
社内研修システムの確立や、外部研修の活用など、スタッフの教育体制を整えることで、サービス品質の向上と均一化を図ります。
提案・受任のための営業ツール開発:
相続手続きの複雑さや専門家に依頼するメリットを分かりやすく説明する資料を用意し、提案力の強化を図ります。
経営戦略上の視点

現在、金融機関や葬儀会社、他士業からの紹介で相続税申告案件を獲得している税理士事務所も多いでしょう。
こうした関係は安定した案件獲得につながる一方で、紹介元の状況変化や競合他社への乗り換えリスクも存在します。また、紹介元の集客状況に左右されるという不安定さも無視できません。そのため、経営戦略としては以下の2点も重要です。
こうした関係は安定した案件獲得につながる一方で、紹介元の状況変化や競合他社への乗り換えリスクも存在します。
また、紹介元の集客状況に左右されるという不安定さも無視できません。
そのため、経営戦略としては以下の2点も重要です。
多角的な紹介チャネルの構築:
複数の紹介元を確保し、特定の紹介元への依存度を下げること。
金融機関だけでなく、葬儀社、不動産会社、医療機関、地域の高齢者施設など、相続に関わる可能性のある様々な業種との関係構築を進めることで、安定したリファラル獲得体制を築きます。
自社による直接集客の強化:
ダイレクトマーケティングなどを活用し、紹介に頼らない独自の顧客獲得ルートを確立すること。
セミナー開催やウェブマーケティング、地域コミュニティ活動などを通じて、直接的な認知度向上と信頼構築を図ることも重要です。
遺産承継業務への取り組みは、短期的には業務負担の増加や新たな体制構築のためのコスト増となる面もありますが、
中長期的な事業拡大と安定化、そして何より顧客満足度の向上につながる重要な戦略と言えるでしょう。
相続を迎えた方々の「困りごと」を包括的に解決できる税理士事務所として、地域社会に貢献しながら、
事業の持続的成長を実現することが可能になります。

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