「身寄り問題/独り身高齢者サポート」市場と士業事務所の取り組み

2025.09.08 15:51

「身寄り問題」に取り組む事務所が増えている

最近、相続や生前対策分野に注力する士業事務所経営者から、よく聞かれることがあります。それは「身寄り問題」に関する取り組み、マーケティング施策についてです。


独り身の高齢者で近くに頼れる人がいない、もしものことがあった時に代わりに手続きを進めてくれる人がいない

緊急入院時の手続きや死亡後の役所手続き、葬儀社手配、家賃支払いなど、いわゆる死後事務業務の対応、

さらには介護施設入居に伴って身元保証人をつけることを求められ、結果として介護施設入居を断られるケース



このような課題に対し、士業事務所が死後事務委任契約、任意後見、遺言書作成などの法的サポートから、身元保証業務などにも取り組むことを検討している司法書士などの士業事務所が、少しずつ増えてきている印象があります。


「身寄り問題/独り身高齢者」に関するデータ

2024年4月、国立社会保障・人口問題研究所が発表した『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』によれば、65歳以上の単独高齢者世帯数は2050年に約1,084万世帯となる見通しです。


この数字は、前回推計を約150万世帯上回っており、独居高齢者の増加スピードが予想を超えて加速していることを示しています。

また、2050年の高齢単独世帯は、全世帯数の約20.6%を占めるとされています。



65歳以上の未婚者数は、2050年には現在の約3倍、約700万人になるという試算です。

また、配偶関係・年齢別・子の有無などにもとづく試算によれば、2050年の「子なし高齢者」は現在の約1.9倍、1,049万人まで増加するとの見込みです。


ただし、ここでいう「子なし高齢者」とは、必ずしも未婚だけでなく、離別や死別による配偶者がいない状態や、結婚していても子を持たなかった高齢者を含む幅広い定義となっています。


身寄り問題対応事業の市場拡大

高齢者の独居・子なし・未婚化が進む中で、「身元保証」や「死後事務代行」、「日常生活支援」などを担う事業者(いわゆる高齢者等終身サポート事業者)が増えており、制度面でも整備が進んでいます。


たとえば、消費者庁が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定し、安全性や倫理的配慮を担保する枠組み作りが進行中です。


大手金融機関などにおいても、高齢世帯の資産保有割合が高いという「資産の高齢化」トレンドを背景に、独居高齢者向けの金融商品の構築や営業、実働の為の士業連携強化などの動きが見られています。


士業事務所の取り組み状況

司法書士は成年後見制度で第三者後見人として最も多く選任されており、成年後見制度スタートとともに、司法書士が逸早く組織的・積極的に取り組んだことから、他の士業と比較して高い選任件数となっています。


一方で、司法書士、行政書士、税理士などの士業事務所で、生前対策、特に独り身高齢者への法的サポートに注力している事務所はまだまだ少なく、プレイヤーが不足している状況です。


競合はそれほど多くない状態となっています。


身寄り問題、独り身高齢者支援事業に対して積極的に取り組めない理由としては、これらの業務が単発的な手続きを行うだけではなく、依頼者の財産管理を含めて継続的にサポートが必要である点や専門ノウハウが必要である点などが挙げられます。


成年後見業務を行っている事務所としては取り組みやすいものの、不動産登記決済が中心である司法書士などは、ハードルが高く感じて取り組みができないというところもあるかもしれません。


先行的に取り組む士業事務所の事例

介護福祉施設との連携


全国の士業事務所の中には、独り身の高齢者に対する法的サポートを提供し、集客やマーケティング活動にも積極的に取り組んでいる事務所があります。

例えば、すでに成年後見業務などで被後見人が入居している介護福祉施設の施設関係者やケアマネなどに「独り身高齢者が抱える課題やリスク」などについての啓蒙活動を行っています。

特に身寄りがなく死後の手続きや財産管理を介護スタッフに任せてしまっている事例、実際に介護施設スタッフが仕方なく対応してしまっている事例なども多いため、そういったことの法的なリスクや、介護スタッフの精神面・肉体面の労力を軽減させるために、法的サポートの必要性などを訴えています。

このような取り組みにより、介護福祉関連からの継続的な紹介を受けている事務所が増えています。


セミナー活動による直接集客


新聞折り込みやポスティングなどで身寄り問題に関するセミナーの案内を送り、実際に独り身高齢者で死後事務手続きや財産管理に課題を持っている高齢者に対してセミナー活動を行っている事務所も増えています。

ある士業事務所では、身寄り問題をテーマにしたセミナー集客活動で80人弱の集客を行い、セミナーを実施。終了後、多くの個別相談をもらっていた事務所もありました。

そのセミナー内には一般高齢者だけではなく介護福祉関係者も駆けつけ、セミナー講師の先生方に連携の相談をしていました。

大変困っていると感じている方々が多いのに、そのようなテーマでセミナー活動を行っているプレイヤーがいないので、今ホットな取り組みテーマであるとも言えます。


具体的な法的サポート内容


具体的な法的サポートとしては以下のようなニーズが出てきます:


  • 死後事務委任契約
  • 任意後見契約
  • 遺言書作成、及び執行
  • 不動産の売却
  • 身元保証
  • 見守りサポート


これらのニーズに対応するため、受け入れ体制を整備しなければなりません。

さらに身元保証業務や見守りサポートなどについては業界内でも形が固まっているとは言えないので、業務体制を確立していくことが業界全体としても求められています。

「身寄り問題サポート」士業事務所こそが取り組むべき理由

問題のある事業者の増加


身寄り問題、独り身高齢者のサポートを謳う民間サービスやサポート事業者が増加していますが、その一方でそれら企業や団体が引き起こす問題事例なども増加してきています。


高齢者市場や特に独り身高齢者の増加、市場ニーズの拡大、さらには本業へのシナジーなどを考慮してこのマーケットに参入するものの、サービス提供のための体制が整っていないこと、さらにこの分野でのルールが整っていないことを利用して、法外なサポート費用を請求するといったような企業や団体も少なくありません。


2024年に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が制定され、2025年にはこれを市町村や介護施設などに広く周知、相談の際の基準とすることが国から通知されるなど、そのような企業、団体を取り締まるような動きも見られています。



士業事務所の社会的責任


身寄り問題、独り身高齢者のサポートは社会的責任も大きく、専門的な知見やノウハウが必要とされている領域です。

利益や収益だけを考えて取り組むべき領域ではありません。


社会的信用も大きく、成年後見業務や生前対策、財産管理サポートなどでの実績がある士業事務所が一番の相談先にならないといけないと考えます。


身寄り問題サポート事業に取り組むためのステップ

身寄り問題、独り身高齢者サポート事業に取り組むためには、以下のステップが必要です:

① 法的サポート内容・サポート体制の構築


まずは提供するサービス内容を明確化し、業務フローや体制を整備する必要があります。

② 一般高齢者向けの直接集客


セミナー、紙媒体への出稿、Webマーケティングなどを活用した集客活動が重要です。

③ 介護福祉関連との連携推進


介護施設やケアマネージャーとの連携体制を構築することで、継続的な紹介を受けられる仕組みを作ります。

④ 業務処理体制やネットワーク構築


連携すべき他業種とのネットワーク構築と、効率的な業務処理体制の整備が必要です。


身寄り問題、独り身高齢者サポート事業に取り組むことを検討している司法書士、行政書士、税理士などの士業事務所様は、株式会社Samikaにご相談ください。
この成長市場での事業展開について、具体的なサポートとアドバイスを提供いたします。

執筆者のご紹介

株式会社 Samika 
代表取締役 川崎 啓

東証一部上場のコンサルティング会社にて15年勤務し、士業事務所の相続・生前対策分野に特化したコンサル部隊を立上げ、累計300事務所を超える相続マーケティング、業務生産性向上の支援実績がある。

現在は株式会社 Samika(サミカ)を2024年1月に創業し、「士業」×「相続」の分野で経営コンサルティングを行っている。また、士業事務所の相続分野におけるマーケティングを支援するLINE拡張システム「サズカルステップ」を開発、提供しており、利用事務所を増やしている。

「『相続で家族、社会が強くなる』を応援する」をミッションとして、相続分野に取り組む士業事務所の経営、マーケティング、業務DX化支援を行っている。