相続業務における顧客管理(CRM)強化の重要性

2025.03.28 11:56

成長する事務所と停滞する事務所の明確な分岐点

「なぜ同じように相続業務に力を入れているのに、ある事務所は安定的に成長し、一方で多くの事務所が伸び悩むのか」


この問いに対する答えの一つが、「顧客管理(CRM)の徹底」にあります。

相続分野で着実に業績を伸ばしている司法書士事務所、税理士事務所、行政書士事務所、弁護士事務所の共通点を分析すると、彼らはただ依頼を処理するだけでなく、顧客との長期的な関係構築を重視し、それを実現するための仕組みを整えています。


一方、集客に苦戦し、安定した業績を維持できない事務所では、案件処理は丁寧に行っているものの、その後のフォローや戦略的な顧客管理が不足しているケースが多いようです。相続業務において「一度きりの顧客」と「生涯の顧客」の違いは、実はこの顧客管理の質にあると言えます。



単発案件依存の経営リスクと継続的顧客関係の価値

多くの士業事務所が直面している経営課題の根本には、「単発案件依存」という構造的な問題があります。

司法書士であれば不動産登記や各種申請業務など、一度の依頼で完結する業務に依存した事務所経営には、次のような深刻なリスクが潜んでいます


  • 収入の不安定性
    新規案件の流入が途絶えると、即座に収入が減少する

  • 集客コストの負担
    常に新規顧客を獲得するための広告費や営業コストが継続的に発生する

  • 価格競争の激化
    単発業務は比較されやすく、価格競争に巻き込まれるリスクが高い

  • 紹介チャネルへの依存
    相続顧客の紹介チャネルの経営方針や他社への切り替えによって経営が左右される

  • 成長の限界
    処理できる案件数には上限があり、人員増加と比例した形でしか売上を伸ばせない


こうしたリスクを抱えた「単発案件処理型」の事務所経営は、現代の変化の激しい環境において、非常に脆弱なモデルです。

対照的に、顧客との継続的な関係構築を重視する「顧客生涯価値型」の経営モデルには、次のような大きなメリットがあります


  • 安定した収益基盤
    既存顧客からの継続的な依頼により、収入の安定性が高まる

  • 集客効率の向上
    新規顧客獲得コストに比べ、既存顧客からの追加受注獲得コストは格段に低い

  • 価格競争からの脱却
    信頼関係が構築された顧客は、価格よりも提供価値を重視する傾向がある

  • 複合サービスの提供
    顧客ニーズを深く理解することで、複数のサービスを組み合わせた高付加価値の提案が可能

  • 紹介による自然拡大
    満足度の高い顧客からの紹介により、質の高い新規顧客を獲得しやすい


相続業務は特に、この「顧客生涯価値型」の経営モデルと相性が良い分野です。

相続は一度きりで終わるものではなく、家族の状況や資産の変化に伴って継続的なニーズが生まれるためです。


この「単発処理」から「継続的関係構築」へのパラダイムシフトを実現するために必要不可欠なのが、効果的な顧客管理(CRM)システムなのです。



他業界との比較から見る士業事務所の顧客管理の課題

歯科医院や保険代理店など、顧客管理を徹底している業界では、定期検診の案内や保険契約の見直し時期など、顧客一人ひとりの状況に合わせた継続的なアプローチを行うことが一般化しています。

これらの業界では、こうしたフォロー活動が「押し売り」ではなく「必要なときに必要な情報を届けるサービス」として認識されており、顧客満足度向上につながっています。


一方、士業事務所では「積極的な営業活動を控える」という文化や広告規制などもあいまって、こうした顧客管理の仕組みづくりが進みにくい状況があります。

しかし、相続のようにライフイベントに深く関わる業務であれば、むしろ顧客への適切なタイミングでの情報提供が「安心感」や「信頼関係」につながるという見方もできるかもしれません。

したがって、「顧客管理=営業」ではなく、「顧客管理=顧客を丁寧にサポートするための仕組み」と位置づけることで、士業事務所でも積極的に導入しやすくなります。



士業事務所における業務システムの現状と限界

多くの士業事務所では、業務特化型の管理システムを利用しています。

例えば、司法書士事務所であれば不動産登記や決済業務、会社関係の登記に特化したシステムなどです。


これらのシステムは1件の業務を効率的に処理する目的で設計されており、登記申請書類の作成や請求書の発行などの業務効率化には貢献します。

しかし、顧客を一元管理し、過去に受任した顧客への追加提案や継続的フォローを行う機能は弱いことが多いです。


市場規模が小さい士業業界では、大手システム会社が参入することが少なく、特定の業務システム会社が寡占的な状況を形成しています。

その結果、どの事務所も同じようなシステムを長年使い続けるため、「一案件完結型」の業務管理にとどまりがちな現状があるのです。



相続分野こそ顧客管理が大切な理由

相続や生前対策は継続的な関係構築が可能な分野です。

不動産登記や決済業務が一度きりで終わることが多いのに対し、相続分野では家族構成や資産状況の変化によって何度も相談機会が生まれます。

例えば、


  • 相続登記から遺言書作成へ
    一度相続登記を依頼した顧客が、二次相続のリスクに備えて遺言書作成を検討するケース

  • 相続税申告後の資産見直し
    相続税申告を行った顧客が、生前贈与や家族信託、事業承継などを追加で検討するケース


こうしたチャンスを逃さないためには、顧客とのやりとりを定期的にフォローし、適切なタイミングで最適な提案ができる体制が必要です。

ここで鍵となるのが、過去の受任履歴・相談内容・家族構成・資産情報などを一元管理する顧客管理(CRM)というわけです。



顧客管理が不足していることで生まれる機会損失

他業界のように顧客管理が定着していない士業事務所では、以下のような機会損失が発生しています。


  1. リピート依頼の取りこぼし
    過去に相続業務を依頼してくれた顧客に対して、二次相続や遺言書作成、家族信託などの追加提案を行わないまま手放してしまう

  2. タイミングを逃したアプローチ
    資産や家族構成が変化する時期に連絡せず、顧客が「気付いたときには他所に相談していた」というケース

  3. データに基づく施策の欠如
    経営指標(反響数、面談数、受任単価、CPA、CPO、LTVなど)を分析できず、集客やマーケティングにおける改善策が打てない


士業事務所であっても、こうしたフォロー体制を「営業」と捉えるのではなく、「必要な人に必要な情報を届けるサービス」と捉えることで、顧客満足度を高めつつ受任機会を増やすことが十分に可能です。



顧客管理(CRM)システム導入のポイント

  • 顧客情報の一元管理
    家族構成、資産状況、相談履歴など、相続業務特有の情報をまとめて管理できること

  • 継続的なフォローを促す仕組み
    一定期間が経過したときにリマインドするなど、自動的にタイミングを知らせる機能

  • 集客指標と経営指標の可視化
    反響数、面談数、受任単価、CPA、CPO、LTVなどのデータを蓄積・分析できること

  • システム導入のハードルへの配慮
    既存の登記・決済業務システムと連携しやすいか、スタッフ教育の手間はどの程度かなど

  • 広告規制・倫理面への理解
    「営業」にならない範囲での情報提供(必要なときに必要な情報を提示する)仕組みが整っていること


これらの機能を備えた相続業務特化型の顧客管理(CRM)システムを活用すれば、「一度きりの依頼処理」から「生涯にわたる顧客関係構築」へと、事務所経営そのものを変革できる可能性があります。



顧客管理(CRM)こそが持続的成長の鍵

相続業務において持続的な成長を実現するには、単なる業務処理の効率化だけでなく、顧客との長期的な関係構築が不可欠です。

「必要な人に必要な情報を届ける」という視点でCRMを活用することにより、士業事務所も他業界と同様に、安定した経営と顧客満足度の向上を同時に実現できます。


  • 単発案件処理に依存した従来型の事務所経営
    収入の不安定や集客コスト増大、価格競争の激化といったリスクを抱えやすい

  • 顧客生涯価値(LTV)を重視した経営
    安定した収益基盤、集客効率の向上、複合サービス提供による付加価値アップなど、多くのメリットを得られる


相続分野で成功している事務所は、顧客管理を徹底し、データに基づいたフォローと提案を行っています。

これは決して特別な取り組みではなく、適切なシステムとマインドセットさえあれば実現可能な戦略です。


「一度きりの依頼」から「生涯の顧客関係」へ──。この転換こそが、相続業務における持続的成長の鍵となります。

顧客管理(CRM)の強化を通じて、貴事務所の未来の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。



もし相続業務における顧客管理(CRM)の導入を具体的に検討されている方は、ぜひ株式会社 Samikaにご相談ください。

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