司法書士業界における分野別ライフサイクル

2025.03.19 23:43

司法書士業界における分野別ライフサイクルをまとめてみました。


「ライフサイクル」とは、製品やサービスが導入期、成長期、成熟期、衰退期と進化していく過程を表す理論です。

この考え方を司法書士業界に適用すると、各業務分野の現在地と将来性が見えてきます。


このような分析のメリットは、各分野に必要な戦略が明確になる点です。


衰退期分野ではシェア確保と業務効率化での生産性向上などが求められ、成長期分野では市場開拓(マーケティング)と差別化が重要になります。

司法書士事務所が限られたリソースを効果的に配分し、バランスのとれた事業展開を図るための指針となるでしょう。

    

不動産登記|成熟期から衰退期|シェア獲得&生産性向上

不動産登記業務は長らく司法書士の看板業務でしたが、現在は成熟期から衰退期への移行期にあると言わざるを得ません。

日本全体の人口減少トレンドにより、不動産取引数の大幅な増加は見込めない状況です。いわば「パイの奪い合い」の時代に突入しています。

しかし、この業務自体はなくなるものではありません。

さらに、司法書士の独占業務であり、他業種の参入障壁も高い為、競争も他分野に比べて難しいわけではありません。

今後は司法書士事務所間でのシェア争いが一層激しくなるでしょう。

この競争を勝ち抜くために、早い段階から不動産会社や金融機関との強固な関係構築を行い、安定した紹介源を確保することが勝ち残りの条件となります。


また、報酬の大幅な上昇は見込めない為、ITツールの導入による業務効率化、生産性向上も重要な戦略となるでしょう。

「守りの業務」としてポジショニングしながら、いかに収益性を維持するかが経営上の課題です。

相続手続|安定期から成長期|需要拡大に伴い競争激化で差が開く

相続手続業務は、現在、安定期から成長期へと移行しつつある重要分野です。


統計によれば、日本国内の高齢者人口は2040年まで増加し続けることが予測されており、それに伴って相続市場も今後20年にわたって拡大傾向が続くと見込まれる縮小傾向の国内市場の中でも稀有な市場といえると思います。


いわゆる「団塊世代」の相続が本格化する中、相続手続の代行需要は着実に増加しています。


しかし、この市場拡大を見越して、様々な業種からの参入も加速しています。


行政書士はもちろん、金融機関や税理士、さらには葬儀社までもが相続手続サービスに力を入れており、競争環境は年々厳しさを増しています。



このような状況下では、単なる相続登記にとどまらず、遺産整理や不動産売却、遺言書作成、家族信託提案などの二次相続に繋げるなど、相続受任単価&LTV(顧客生涯価値)向上のポイントとなるでしょう。


また、相続発生から完了までの一連のプロセスを効率化し、顧客満足度を高めながらも生産性を向上させること、司法書士資格者に依存せず非資格者、及びパートスタッフでも同じようにサービス提供ができる組織的取り組みが成功の鍵を握ります。


生前対策|成長期|マーケティング手法確立が急務

遺言書作成、家族信託、任意後見などの生前対策分野は、まさに成長期の有望市場です。


超高齢社会の進展に伴い、「認知症になる前に何とかしておきたい」というニーズは急速に高まっています。
特に2025年には団塊世代が後期高齢者となることから、このニーズは今後さらに加速するでしょう。


この分野の特徴は、明確な市場リーダーが不在であることです。

つまり、適切な戦略とマーケティングを展開できれば、短期間でトップポジションを獲得できる可能性を秘めています。


しかし現状では、顧客ニーズが顕在化している相続手続に比べて、効果的な集客手法や受任確率が確立されておらず、潜在需要を顕在化させることが難しい状況です。

セミナー開催や継続的なフォロー施策など、様々なアプローチを試行錯誤しながら、生前対策分野における効果的なマーケティング手法の確立が急務となっています。

また、相続手続に比べ提案レベルに差が生まれやすく差別化要素が大きい点がポイントです。
その為、複雑な家族関係や資産状況に応じた提案力も不可欠です。

事業承継|導入期|将来性と参入障壁の両立

事業承継分野は、ライフサイクル上の導入期に位置する新興市場です。

経済産業省によれば、今後10年で約245万人の中小企業経営者が70歳を超え、約半数が後継者未定という「事業承継の2025年問題」に直面しています。


司法書士業界内からは確かにブルーオーシャンに見えますが、市場全体では大手金融機関や税理士法人がすでに資本力、組織規模、ブランド力を武器に積極参入しています。

特に地方銀行や信用金庫は顧客との早期関係構築という点で優位性があります。

司法書士事務所が成功するには、単なる法務サポートを超えた競争優位性の確立が必要です。


一方で、株式承継や事業再編といった法的側面から法務主導型アプローチをとることで、ニッチ市場での先行者利益獲得も可能です。

この市場は高い将来性と参入障壁を併せ持っており、税理士や金融機関との連携モデル構築など、戦略的な市場参入が求められます。


司法書士業界全体を俯瞰すると、成熟分野と成長分野が共存しており、事務所経営においては「攻め」と「守り」のバランスが重要です。



競争環境は確実に厳しくなっていく一方で、新たな成長機会も広がっています。


この変革期を乗り切るためには、組織力の強化と専門性の向上が不可欠であり、変化する社会ニーズを敏感に捉えた戦略展開が今後の成功を左右するでしょう。

無料経営相談を実施しております

「経営に課題を感じている」​
「業績アップや生産性向上に関するアドバイスが欲しい」

​など士業事務所経営者様のお悩みに対して最適なご提案をさせていただきます。​

オフライン・オンラインどちらでも対応可能です。​
お気軽にお問い合わせください。